゚*Phantom Hideaway*゚
□-つくせ-
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七年前――
『美しく輝く夜、
月に背き、海遊したれば
海神怒りの末』
『満月の夜、
海底の宝を手中ならば
得ること、永遠(とわ)の絆』
「アルリッヒには
この二つの言い伝えが
あることをご存知だな?」
「おう」
「はい」
「ああ」
「ええ」
「うん」
「いえす」
海の声が常に聞こえるこの場所は
漁業を営む東の村、アルリッヒ――
波の打ち寄せるこの渚で
一人の若者と六人の子ども達が
談笑していた。
子ども達の目に映るのは
晩照の景色と茜色のウルディ海――
夕日を遮る若者の姿は逆光となっていて
明確には伺えないが、
子ども達はしっかりと彼の顔を見ている。