゚*Phantom Hideaway*゚
□-なせ-
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「行くのか、ルノゼア……」
声がしたドアの方を彼は振り返る。
小屋に入ってきた村長、
兼ルノゼアの祖父、アムイルは
前もって手紙の内容を知っていたかのように
彼に声をかけた。
アムイルはルノゼアの横を通り、
流し台の前に立つ。
「……ああ、俺の出番みたいだ」
ルノゼアは読み終えた手紙を
便箋にしまいながら言った。
彼の群青の瞳は据わっている。
「出発はいつだ?」
アムイルは振り返らず
ただ黙って紅茶を注いでいた。
淹れ立ての紅茶がかすかに薫る。
「満月の日、明後日だ」
「……そうか」
外から聞こえる
小鳥のさえずりは楽しそうだった。
だが、今はそれさえ寂しく聞こえる。
村長は、もうもうと湯気の立つ
淹れ立ての紅茶を一口飲んだ。