゚*Phantom Hideaway*゚

□-であえ-
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大通りから森に向かって歩いていると、

入口らしき場所に着いた。

入口と言えど、まともなそれはない。

ここに着くまではさほど時間は要しなかった。

にぎやかな大通りとは打って変わって、

静寂に満ちた薄暗い日陰に入った。

目の前にある高い樹木が太陽の光を阻み、

巨大な木陰を生み出していた。

日中はずっと日が当らないせいか、

足元の敷石には薄くコケが生えていた。

敷石の表面は湿っていることが見て分かる。

森は太陽の光熱を独占しているらしい。

これだけ日光を浴びているのなら

立派な森になるわけだ、とルノゼアは感心した。

森の緑が彼の視界を覆い尽くす。

辺りを見渡していると、何かが目に留まった。



「ん、看板か」



傾いた、古い看板だった。

看板は木製のため、湿気ていた。

きっと、この日陰のせいで湿気ているのだろう。

貧弱に痩せ細った一本の脚は、

一蹴り入れれば折れそうである。

ルノゼアはその看板に書かれた文字に目を通す。



「ペルル村、ペキラの森……迷子注意、だと」



文字は荒々しく書かれていた。

ルノゼアのように、

この森に入らんとする者に

幾度と注意を呼び掛けて来たのであろう。

注意書きに動じることなく森に入って行った者、

ここで引き返した者、

この看板はいろんな人を見て来たことだろう。

迷子、ということは、

相当な広さだということが分かる。



「迷子になるなと注意するなら、

 いっそのこと立入禁止にしちまえばいいのに」



腕を組んで、しばし看板を見つめる。

でも仕方ねえ、とルノゼアは割り切り、

渋々森へと入って行った。



 
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