short story
□『最初で最後の愛の言葉』
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「エリザ! 兄さんを見なかったか!?」
買い物から帰ってきたエリザを待っていたのは、とても焦っている顔のルートだった。
「えっ!? 見てないけど…」
「ついさっきルートが聞いたそうなのですが…。ギルベルトはあと1時間ほどで消えてしまうそうなんです…」
リビングから出てきたローデが説明する。
「消えるって、何それ!? どういう意味!?」
ルートに掴みかかるようにして問うエリザ。
「オレも詳しくは分からない。ただ、もう兄さんは国ではないから、存在する意味がなくなった…みたいな事を言われたんだ…」
ルートの声は今にも消えてしまいそうなほどか細くなっている。
「今朝出かけたっきり、帰っていないみたいで…。探さないでくれって置き手紙が置いてあったんです」
ローデは俯き、唇をかみしめている。
エリザは少し考え込むと何か閃いたようで、くるりと体の向きを変え、走っていった。
「…!? エリザ! どこに行くんだ!?」
ルートの質問にも答えずに、エリザは走った。
走ると足にまとわりついてくるスカートを手で押さえつけながら、ただ一心に走った。