short story

□『そのままで』
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前回と同様、捏造人名使用中。


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「エリザベータさんて、いつも露出の少ない服ですわね」

「確かにそうっスよね。何か訳があるんスか?」

とある国の女王の即位記念に開かれたパーティで、私はリヒティとセシルにそう聞かれた。

どう説明しようかと私が悩んでいると、リヒティは何かひらめいたようで、手をぽんと叩いた。

「確か今日は衣装の貸し出しをやっていましたわ。エリザさんでしたら背が高くてスタイルがいいので、きっとなんでも似合いますわ!」

リヒティがそう言うと、セシルはいいっスね、と相づちを打った。

そして2人を止める間もなく、私は衣装部屋に連れられてしまった。

派手なドレスから、控えめなワンピースまで、色とりどりの服で埋め尽くされている衣装部屋。

中にはいるとすぐ、リヒティとセシルはどこかに行ってしまった。

私は入り口近くの壁に寄りかかり、ドレスなどの服を見つめながらため息をついていた。

「ため息なんてついて、どうしたんや?」

いつの間にか、うすい黄色のマーメイドドレスをまとったベルが隣に立っていた。

私が簡単ないきさつを説明すると、ベルはうんうんと頷いていた。

「まぁ確かに、あの2人の気持ちも分からんでもないけどなぁ…。あの2人は、昔エリザが大暴れしてたこと知らへんのやろ?」

どうしようかなぁ…とベルと2人で考え込んでいると、リヒティとセシルが何かを抱えて持ってきた。

「これ、どうですか? あまり飾りのない、シンプルなものを選んできたのですが…」

そう言ってリヒティが差し出してきたのは、うすいグリーンで、ベルと同じようなマーメイドドレスだった。

せっかく持ってきてもらったのに、着ないのはリヒティとセシルに悪いので、私はそのマーメイドドレスを受け取り、更衣室に向かった。

今まで着ていた服を脱ぎ、リヒティとセシルが持ってきてくれたマーメイドドレスを着て、小さな更衣室の壁に貼り付けられている姿見を見た。

(…やっぱり、醜いなぁ)

普段は服で隠れてい待っている肩の辺りに、小さな切り傷や擦り傷の跡がいくつもあった。

昔戦っていた時に出来た傷が、キレイに治らず、今も尚残っている。

それを隠すために、私はいつも露出の少ない服を着ていた。

(リヒティとセシル… 2人はどんな反応をするかしら…? 怖がる? それとも、憐れむ?)

鏡の中の自分を見ながらそんなことを考えていると、更衣室のドアがコンコンと叩かれた。

ドアを少し開けると、ベルが立っているのが見えた。

「エリザ、とりあえず出てきた方がええよ。2人とも、ちゃんと説明すればわかってくれるやろ…」

私はその言葉に頷き、更衣室を出た。

「どうかな…? 久しぶりにこんな格好したから、少し恥ずかしいのだけど…」

私がそう言うと、リヒティとセシルはうれしそうな顔をした。

でも、その顔はすぐに曇ってしまった。

「エリザさん…。そのたくさんの傷跡は…?」

セシルにそう聞かれて、私は説明を始めた。

私がどうに育ってきて、どうしてこんなにたくさんの傷跡を持っているのかということを…。

私は話し終わってから笑ってみせた。

きっと、うれしいときのような笑顔ではなかったけれど…。

「醜いでしょう…? 華やかな場に、こんな傷跡を見せるのは良くないわ。だから私の服は露出が少ないのよ」

「エリザは醜くなんかありませんよ」

私が言い終わってすぐ、誰かの声がした。

声のした方を見ると、更衣室の陰からひょっこりとローデさんが出てきた。

「そのたくさんの傷跡は、あなたが自分の国を守るために負った傷なのですから、醜くなんかありません。そんな傷跡があっても、あなたは十分美しい女性ですよ」

そう言って笑うローデさんを見て、私はとてもうれしくなった。

「そうや!! ちょっと待っててや!」

急にベルはそう言い、どこかに走っていき、すぐに戻ってきた。

ベルの手には、何かの布があった。

「ストールや。これで傷跡を隠せるように、上手く巻いてみたらどうや?」

ベルはそう言って、うすいクリーム色のストールを差し出してきた。

私はそれを受け取り、肩のあたりに巻いてみた。

多少見えてしまっても、ほとんどの傷跡を隠すことが出来た。

「みんな…。ありがとう」

私はうれしさのあまり、泣いてしまいそうだった。

「さぁ、ホールに戻りましょう。お料理が終わってしまいますよ」

ローデさんに促され、ベルとリヒティとセシルはホールへと戻っていく。

その後を追って、私はローデさんと並んで歩き出す。

「エリザ、あなたは自分の傷を気にしすぎです。あなたはそのままで十分うつくしいのですから」

ローデさんはそう言って笑った。

私も、とびっきりの笑顔で返事をした。



セシル:そういえば、どうしてローデさんは女性の衣装室にいたんスかね?
リヒティ:そうですわね…。当たり前のようにいましたけど…。
ベル:あ〜、それは多分、坊ちゃんは方向音痴だからやと思う…;;

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