short story
□『どうして…?』
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みたいな感じのシチュで、前半が香君目線、後半が湾ちゃん目線で書いてみました。
にーにが菊を拾って、そのあとに香、湾、ヨンスを拾って育てたってかんじの背景です。香、湾、ヨンスが現代の高校生くらいの設定です。
(菊さんは多分成人してるあたり…)
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「香、もう諦めて……」
うつむき加減で、湾が言った
その手には、オレが昨日あげた手紙が握られている
また返されてしまった、湾への手紙
何通も何通も、湾への想いを綴った手紙を書いてきた
でも、オレの想いが湾に届いたことはない
いつもいつも、直接返されるか、破かれて捨てられるか…
湾がオレのことを恋愛対象として見ていないのは、とっくに気づいてた
でもそれを認めるのが嫌で、想いを伝え続けた
湾は菊のことが好き、なんて、にーにやヨンスに言われなくても分かってる
それでも、抑えられないこの気持ち
何度突き放されても、それでも湾を追ってしまう…
どうしたらいいのか、なんて分からない
でも、諦めることも出来ない
「香のことは好きだけど、それは幼なじみとして。恋愛とは違うの…」
初めて自分の想いを込めた手紙を渡したとき、湾はそう言った
それから、湾に手紙を渡すたびに、湾はオレに笑いかけてくれなくなった
そんなオレらを、にーにやヨンスは悲しげに見てるだけ…
自分の想いが伝わらない
そのたびにオレは、自分が狂ってきてるんじゃないかと思う
なんで伝わらないって分かっていても、手紙を書いてしまうのだろう…
伝わらないのが分かっているなら、伝えようとしなくてもいいのに…
「香、好きだよ」
そう言って笑いかけてくれたあの幼い頃の湾はもういない
今はもう、手紙を突き返してくるときの悲しげな顔しか見ることが出来ない
それでもまた、オレは手紙を書いてしまう…
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どうして諦めてくれないの?
私はあなたを悲しませることしか出来ない…
だって私はずっと、菊さんのことが好きだったんだもん…
幼い頃からずっと、菊さんにこの想いを伝えたくて
でも、香が悲しげな顔で手紙を渡してくるから、自分の想いが伝えられない…
私が菊さんに自分の想いを伝えたら、きっと香はもっと悲しそうな顔をする…
私は、家族みんなで笑っていたい
私が菊さんを好きになったからいけなかったの?
昔の私たちには、戻れないのかな?
初めて香が私に手紙をくれたとき、香は少し照れながら渡してくれたね…
でも今は、辛そうにしか見えないよ…
辛いのなら、もう手紙は書かないで…
そんな私たちを見て、ヨンスもにーにも何も言わない
香からの手紙が10通目くらいになったとき、私はにーにに相談した
「にーに、香が諦めてくれないの… 私はどうしたらいいの…?」
「それは2人の問題ある。我が口出しをしていいもんじゃないある。どうにかしたかったら、ちゃんと自分たちで話し合って決めるよろし。」
そう言って、私の頭をポンポンとたたいた
あれから、どれくらいたったのだろう…
結局何も話し合わないまま、時間だけが過ぎていく
見る見るうちに、香は病んでいくようだった
ああ、また今日も手紙がある…
私の机の上には、見慣れた封筒が置いてあった