short story

□『今でもあなたが好きです』
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「ずっと待ってるから。行って来い」

あなたは笑顔でそう言ってくれた

私は、その笑顔を忘れた事はなかった

††††††

「疲れた〜」

空港に着き、荷物を置く

肩をトントンと叩き、疲れをほぐす

2年間の留学は、長いようであっという間だった

途中、帰りたいと思う事もあった

でも、得るものも大きかったと思う

(大学に顔出さないと…。あの人、約束覚えているのかしら…)

あの人とは、高校時代から付き合っているアーサーだ

私よりも女みたいだったりする彼

泣きそうだったのを我慢して、笑顔で見送ってくれた

留学の話をギリギリまでしなかった私を責めたりしなかった

そんな彼に、2年ぶりに会える

ずっと電話でしか聞けなかった声を聞くことが出来る

それがこんなに嬉しいなんて、自分でもびっくりする

空港を出て、タクシーに乗る

まだ夕方なので、空港から直接大学へ向かう

2年ぶりだが、大学の周囲の町並みは変わっていない

その事に、不思議と安心感が込み上げてくる

すぐに大学に着き、タクシーを降りる

途中、何人もの友人にすれ違った

友人とは後日会う事を約束して別れた

私が向かうのは、キャンパス内にある図書館

アーサーは大概そこにいるから

夕方ということもあって、あまり人気のない図書館

その一角にある自習机に向かうアーサー

真正面から歩いて行くと、急に顔を上げた

「エリザ…?」

「たった2年会わないだけで、彼女の顔を忘れたの?」

「いつ帰って来たんだ?」

「ついさっきよ。一番に会いたかったの」

私がそう言うと、アーサーは立ち上がり、私に抱き着く

私もアーサーの背中に手を回し抱きしめる

「会いたかった、アーサー」
「俺もだ、エリザ」

そう言って、どちらともなくキスを交わす

唇から伝わるあなたの気持ち…

それは…


今でもあなたが好きです


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