short story book

□『激しく切ない戦火のよう』
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『諦めなさい、ティキ』

無情にも、そう言い捨てる女――アディ

現在最も若い元帥だ

イノセンスは寄生型で、血液

自らの血液で生成した銃を、己の弟であるティキに突き付ける

そう、姉であるアディはエクソシスト、弟であるティキはノア

対極の存在にある姉弟

2人は今、戦場にいる

「オレを、殺すか…?」

アディとの戦闘で疲弊した体を庇いながら言うティキ

苦々しい表情を浮かべている

『殺すわよ。任務だもの、仕方ないじゃない』

悪びれた様子もなく、アディはたんたんと述べる

「千年公も、鬼だよな。姉を殺せ、なんてよ…」

『そうね。中央庁も、酷いわ』

「顔が、そんな感じしねぇよ」

『元々表情が薄いのよ』

「知ってる。昔は表情豊かだったのにな」

『戦いだらけの生活で、そこまで表情があるあんたが珍しいのよ』

そう言って、緊張をとくアディ

その瞬間アディが浮かべた笑みに、ティキは目を奪われる

「いつもその顔してりゃ、モテるのにな」

『興味ないわ。それに、こんな血まみれのあたしを好きになる人なんていないわよ』

「じゃあ、姉であるアディを女として好きなオレは、どうすりゃいい?」

ガバッと、アディに抱き着くティキ

その瞬間、パンッと乾いた音が響いた

こめかみから止めどなく溢れるティキの血液

『ごめんなさい、ティキ…。愛してるわ…』

アディの頬を伝う、一筋の涙

ティキの血液は、アディのイノセンスによって変形していく

『もう、あなたは戦わなくていいわ。戦いは、私が終わらせる』

ティキの血液は、1つの棺を作り出す…

紅い紅い、薔薇の華と共に…


激しく切ない戦火のよう



(想いは激しく、)
(止まることを知らない…)


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