あなたと共に歩む道

□愛を捧げる
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『たっだいま〜!!』

奈摘が元気な声を上げて、帰って来た事を知らせる

俺は奈摘を迎えに行き、そのまま部屋に連れて行く

無言の俺に、奈摘は驚き、不安げな顔をする

『土方さん??』

そう言う声も、不安が滲み出ている

部屋に入り、襖を閉める

重苦しい雰囲気が、部屋に漂う

「話は聞いた」

俺がそれだけ言うと、奈摘は全てを察したようだった

『そう、ですか…。じゃあ、もう隠しても意味ないですね…』

泣くのを堪えているような切ない表情

奈摘は着物の左腕の袖をまくった

奈摘の左腕には、新しそうなのも古い傷跡もあった

向きの不揃いな、たくさんの傷跡…

奈摘の過去がいかに悲しいものだったかが見てとれる

『最初は浅い傷だったから、治ると分からなくなった…。でもだんだん深くなって、気付いたらこんなのに…』

自分の左腕を見ながらそう訴えてくる

『こんな傷だらけのオレなんて、嫌ですよね…』

親に愛されず生きてきた奈摘

その哀しみを、なかった事にすることは出来ない…

奈摘の左腕の傷跡を消す事も、俺には出来ない…

だけど、俺にも出来る事はある

そう思い、俺は奈摘を抱き締めた

小柄な奈摘は俺が抱き締めると、とても儚い存在のような感じがした

『っ!! 土方、さん…?』

「俺に、お前の痛みを背負わせてくれ。俺は奈摘を哀しませないから」

そう言うと、奈摘は俺の腕の中で肩を震わせ始めた

『…っ!! 愛されたかったよっ!! 私を見て欲しかった…!!』

奈摘が自分を"オレ"と呼ぶ訳

それはきっと、ただの強がりだったのだろう

親に愛されず、寂しさで一杯だった奈摘の…

「大丈夫だ。俺が、お前の両親の分も愛してやるから」

死ぬまで愛してやる

いや、死んでも愛してやる

ただ、奈摘だけを…


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