あなたと共に歩む道

□明かされる過去
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『発端は、6年くらい前かな…』

いつも飯を食う広間に、輪になって座る俺達

視線を畳に向けた絢が語り始めた

『奈摘の、5つ歳上のお兄さんが亡くなったんです。

奈摘の家は、私達が住んでいた町で古くからある歴史的な家系で…。

私達も詳しくは知らないけど、家関係の事件に巻き込まれて、命を落としました。

それから、奈摘の両親は変わってしまったんです。

奈摘のお兄さんはとても優秀な人で、今後に期待されていました。

それまで、奈摘の両親はお兄さんしか見ていなかった…。

けど、お兄さんが亡くなった途端、今度は奈摘にその期待を背負わせようとしたんです。

朝から晩まで勉強漬け。

元々勉強好きではなかった奈摘には、毎日が苦痛でした。

そしてある日、とうとう耐えきれなくなった奈摘は産まれて初めて両親に反抗しました。

その次の日からでした。

奈摘が両親からの暴力を受けるようになったのは…』

そこまで言って一息吐く絢

誰もが、言葉を発することが出来なくなっている

原田も総司も、何とも言えない表情をしている

まだ長いので続きいきますね、と言って絢はまた話し始めた

『奈摘は毎日、両親から殴る蹴るなどの暴力を振るわれていました。

奈摘の両親は権力を持っていたから、止めに入ることの出来る人もいませんでした。

いつしか奈摘の身体は痣や切り傷など、たくさんの怪我が目立つようになっていました。

2年程たってから、奈摘は壊れてきました。

自らの身体を、今度は自分で傷付けるようになりました。

刃物で、手首の血管を切り付ける…。

死にたかった、とは違うと思います。

ただ、やり場のない思いのはけ口にしてたんでしょうね…。

私達は無力でした…。

一緒にいるだけで、何もしてあげられなかった…』

奈摘の過去が、俺に突き刺さる

まだ15だと言うのに、こんなにも重い過去を持っているなんて…

俺に奈摘を救うことが出来るのか…?


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