あなたと共に歩む道

□繋がる想い
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茉南にはああ言ったが、正直この人数差は辛い

近づいてくる奴を片っ端から倒すが、一行に人数が減る気配がない

寧ろ、増えているような気さえする

ふと茉南を見ると涼しげな表情で捕まっている

これも信頼の証なのか、と前向きに考える

「おらおら、隊長さん? 動きが乱れてきてるぜ?」

茉南を捕まえている男が言う

お前なんかの手で茉南に触れるな、と今すぐに言いたい

だが、それを阻まれる

そんな事を考えていた、ほんの一瞬だった

ひゅっと敵の刀が、俺の首筋をとらえる

俺の頬を、冷や汗が伝う

少しでも動けば、その刀によって俺の血管は切られてしまうだろう

そう思った時だった

「ちょっと、何殺られそうになってるの?」

聞き慣れた男の声が響き、小屋の入り口付近にいた奴等が吹き飛んで行く

「原田さんを離して下さい」

さっきの声よりも高めの、女の声がした

俺の首筋に刀を当てている男が、その声のした方を見る

そこにいたのは、着物姿で刀を持った絢だった

「聞こえませんでしたか? 原田さんを離せ、と言ったのですが」

いつもより、冷ややかな瞳の絢

それを見て男は何を思ったのか、絢に飛び掛かっていった

いきなり解放されたことに驚き、俺はすぐに動き出すことが出来なかった

絢は懐に入って来た男の刀を器用に受け止め、弾き返した

絢と一緒に小屋に来ていたのはやはり総司のようで、敵は大分減った

絢は別の世界から来たとは思わせないくらい強かった

結局、総司と絢のお陰て敵は片付いてしまった

男を倒した絢は茉南に駆け寄ると、

「茉南、大丈夫?」

そう声を掛けながら、手足を縛っていた縄を切った

「ありがと、絢」

「どーいたしまして」

絢は笑顔でそう言うと、総司の元に戻った

「茉南、悪かったな」

まず最初に述べるのは、謝罪の言葉

そして、次に述べるのは…

「ありがとう」

感謝の言葉

「意味分かんない」

答えになっていない返事をする、茉南

しかし、表情はいつもより穏やかだ

「守ってやれなかった。結局、絢と総司に助けられた」

俺がうつむきながら言うと

「別にいいです。原田さんは、ちゃんと来てくれましたから」

ばっと顔を上げると、絢達に向けるような笑顔の茉南がいた

「え?」

「私が恐れを抱かなかったのは、今まで一緒にいたことで、原田さんへの信頼が生まれていたから」

少し恥ずかしそうに言葉を紡ぐ茉南

「絢と沖田さんが活躍してたけど、それは目を瞑ります」

茉南は少し怒ったようになる

俺が悪かった、と言うと

「原田さん、助けてくれてありがとうございました」

また、茉南の明るい笑顔

「屯所に戻りましょう? こいつらをどうにかしないと」

昨日までとは別人のような、綺麗な笑顔の茉南が俺を呼ぶ

俺は、茉南に近づけた気がする


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