short story book
□『対極の存在』
2ページ/3ページ
数時間後、私はある街の路地歩いていた
今回の任務で殺す相手との待ち合わせ場所に行くために
路地には灯りとなる物はなかったが、幸い満月の夜だったために、前を見ることは出来る
路地が突き当たった場所に、私が殺さなくてはならない相手がいた
「久しぶりだな、アディ」
『お兄ちゃん…』
私はそう言い、腰のあたりに手を回し抱きついた
私が今回殺さなければいけない相手――
それは、実の兄であるティキ・ミックだ
「やっぱり、とうとう来たか」
『うん。中央庁からの命令だって』
私は顔を上げずに応えた
「オレも、千年公から言われた。アディを殺せって」
お兄ちゃんの腕の力が、より強くなる
私もお兄ちゃんも、口を開かない
「…逃げちゃおっか」
ふいに、お兄ちゃんが口を開いた
『…え?』
「オレには、アディを殺すなんて出来ねぇ。だから、逃げよう。アディと一緒にいられるのなら、オレは何もいらない」
『いいよ。私も、お兄ちゃんと一緒にいたい。2人一緒なら、きっと大丈夫』
私は顔を上げ、お兄ちゃんを見る
『だから、お兄ちゃん。私のイノセンスを破壊して』
私がそう言うと、お兄ちゃんは無言で頷き、私のイノセンスをパキンッと破壊した
.