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□キスの魔法
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人間の域を超えてる怪力を持った馬鹿がついにやりやがった。
『申し訳ない』

いつもの無表情で俺に頭を下げてくるこいつは本当にすまなかったと思っているのだろうか。いや思ってねぇな絶対。
ことの始めはフランキーの手伝いでこいつがトンカチを持ち出したところだ。男部屋の天井に穴が開いちまったとかなんとかで外から釘を打っていたらしい。俺はその部屋の中で昼寝。だがいきなり『おぉ』とか間抜けな声出しながら人の上に落ちて来やがって当然俺は目が覚めた。そしたら額から血が……。

「で、なんで落ちてきた?」

『なかなか釘が入らなくて』

「…フルパワーで打ちやがったのか」

『すまない』

こいつは自分の怪力に疎すぎると思う。つかただのトンカチで天井破壊ってやべぇだろ。親の顔が見てみてぇ。あ、やっぱ見たくねぇ。……色々すごそう。

『残念ながら私にはチョッパさんみたいな医療技術はない』

「知ってる」

人体を破壊しかねないお前が何を言う。心の中で呟いてみた。ていうかチョッパじゃなくてチョッパーだ。

『そこで簡単な魔法をゾロさんにかけようと思う』

「魔法だぁ?」

サンジさんに教わったんだ、とベッドに座り込んでる俺と視線の高さを合わせてきた。何だ魔法って。あのコックの言うことなんざどうせ如何わしいもんだろ。こいつもなんで信じるんだか。

『よし、』

「あ?何すんだ?」

『ゾロさんは何もしなくていいぞ』

一体何をされるのかと思いきや、おもむろに額の包帯に触れられる。本当に何がしたいんだ。ほんの少し痛みがはしるからやめろと手首を掴もうとした瞬間、温かくて柔らかい何かの感触が薄い包帯を通して肌に伝わった。



(…何しやがった?)
(チューすると傷が治るらしいぞ)
(あのクソコック!!)

 

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