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□甘い言葉の最後
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ごろん、と寝返りをうつ
視界にはあたしなど気にもしないで本を読み続けるローの姿がある。何分もこうしたまま時間が過ぎていった。
「ロー」
やっと話し掛ける。当然、ローからの返事は無かった。返事の代わりにペラ、と本をめくる音が聞こえる。
もう一回話し掛けてみる。
「ロー、」
「‥うるさい」
やっと返って来た返事がこれ。いい加減にして欲しい。
「ローのばか」
「お前はもっと馬鹿だ」
こういう時の反論は必ずすぐに返ってくる。
「ローなんか知らない」
布団を顔まで被る。いくら拗ねたって、怒ったって、絶対にローの部屋から出て行くことはない。
ローが絶対に相手してくれる方法は分かる。でも実行はしない。
でもだんだんと寂しくなる。手をのばせば届く距離にいるのに触ることはおろか、会話すらない。
「ロー、相手して」
「何で」
結局いつもの繰り返しになってしまう。先に折れるのはいつもあたし。
「寂しい」
「他の奴に相手してもらえ」
「ローが、いい」
だんだん
と恥ずかしくなる。そろそろ言わないといけなくなる。
「何で」
もう潮時だ。今回もあたしが言う羽目になってしまった。口角を上げて笑うローが見える。
「ローが好きだから、ローがいい」
ローに好き、と甘い言葉を言う。ローから好き、なんて言われた事はきっと片手で数えられる位。いや、片手もいらないかもしれない。長い付き合いなのに。
それでもローに対する想いが冷めないのは、
「‥知ってる」
パタンと本を閉じ、その意地の悪そうな顔で笑って、ぎゅっと絶対に抱きしめてくれるから。
最初から好きって言えばすぐに解決する。だけどいつかローが自発的に相手してくれるかな、ていう淡い期待があるから言うのをためらうんだけど、
あたしの甘い言葉の最後には、貴方の甘い行為が待ってるからついつい言ってしまう