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□だけど、もう、戻れない
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「別れよう」


別れを切り出したのは 私だった。
まさか 自分から別れをつげる日が来るとは思ってもいなかった。


「な…んで」

「…ごめんね、ルフィ」


急な話で ルフィはただ呆然と立っていた。


「待てよっ、おれ何かしたか!?謝るからっ」

「違うよっ、ルフィは何も悪くないよ!」


ルフィは 優しいから。
誰にでも優しいから。

不安になる。
嫌われたら?
もし、これから愛してもらえなかったら?


「好きだよ。私、ルフィが好きだよっ」

ただね、


「じゃあなんでっ…おれだって好」

「ルフィ」

ただ、ルフィに嫌われるのが怖いんだ。


「…ごめん」


私が言葉を放つと、
ルフィは 麦わら帽子を深くかぶりなおした。


「わかった、別れる」


深く後悔する。

ルフィの頬に流れる涙、
そして震えてる声を聞くと、
自分はなんでこんなことをしてしまったのか、そう深く後悔する。

だけど 嫌われるより全然いい。あなたに嫌われたら私はどうしたらいいの?


私は ルフィに背を向け、歩き始めた。


「…ッ」


…痛い。胸が痛い。

そっと振り向くと そこにルフィの姿はもうない。


「…ルフィ、」


後悔の波。
でも、私が決めたこと。


「愛してる」


どれだけ想っていても
私は あなたに嫌われる怖さに負けた。

気持ちがあっても

もう、戻れない。


 

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