Main(短編)

□過去拍手
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「貴方は一体こんな所で何をしてるんですか?」
「さぁ?何だと思う?」
「はい?」

骸は質問を質問で返され思わず、唖然としてしまう。
それもそのはず、並盛から隣町である黒曜にある川原で一人でいる事に疑問を持った為だ。

「質問しているのは僕です。何故貴方が此処に居るんですか、沢田綱吉!」
「ん〜?ちょっと、考え事をしてたら此処に居た。…じゃ、ダメ?」
「そんな答えで僕が納得する訳…はぁ…まぁ、良いでしょう。どうせその様子じゃ答えるつもりは無いのでしょう?で、何ですか?」
「はっ、何が?」
「だから、悩みがあるのでしょう!?なら仕方なしにですが、僕が君の悩みとやらを聞いてあげると言っているんです!」

ツナは一瞬何を言われたのか分からず、呆けてしまったがすぐに骸が言い直したので、漸く理解する。

「ふふ…ねえ、骸はさ、六道輪廻を回ったんだろ?死ってどんな感じ?」
「どんな感じと言われましても…何とも答えにくい質問ですね…それが何か悩みと関係あるのですか?」
「ううん、別に…」
「だったら、答える義務は僕には有りません。」
「ん、そうだね…」

骸はこの時何とも言えない違和感を感じた。
彼であって、彼でないそんな感じ。

「じゃあさ、骸は俺が死んだら悲しい?」
「何を言いだすかと思えばまた冗談ではぐらかすつもりですか?言いたくないならそう言えばいいでしょうが!別に僕は君の悩みを聞かなくてはいけない訳では無いのですから!」
「ははっ、そうだね!…ホントそうだよね…。」
「?全く…。あぁそう言えば、態々僕に話さずとも悩みを聞いてくれる人間なら貴方の周りには沢山いましたね。そいつらに相談すれば良いのではないですか?」
「沢山、ね…うん、そうするよ。あのさ、骸…」
「今度はなんですか?」
「今日さ、黒曜ランドに泊めてくれない?」
「今度は何を言いだすかと思えば…何故そんな事を僕に言うんです。獄寺隼人や山本武なら喜んで貴方を泊めてくれるんじゃないですか?僕はお断りですよ!」
「だよね!…無理言ってごめんな?」

ツナは、骸が断るとそれを簡単に了承した。
粘る訳でもなく、簡単過ぎるほどに―――。

別に骸はツナを黒曜に泊めるのを本気で嫌がった訳では無い。
ただ、骸はツナが悩んでいるのに悩みを自分には話して貰えず、彼の周りに居る彼らは相談に乗って貰える権利があるのだと彼らに嫉妬しの意趣返しのつもりであった。

ただ、それだけだった―――。

ツナは重い腰を上げると、骸に別れの挨拶をする。

「さてとっ、俺はそろそろ行くね…」
「さっさと帰って下さい。こんな所にいつまでも居られたら迷惑です!」
「あはは、骸は言う事がキツイな〜なぁ、まだマフィアを殲滅したいって思ってるのか?」
「何を言うかと思えば…そんな事当然でしょう!」
「その為に今も、オレを利用したい?」
「態々君なんかの力を借りなくても、今の僕達に掛かればマフィアの殲滅位朝飯前ですよ!」
「…そっか」
「…??たっく、いつまでもこんなとこに居るからもう暗くなってきたのでお家の方も心配されてるのでは無いのですか?」
「あぁ…そうだよな、骸本当にごめんな?」
「迷惑を掛けられたことなら気にしてません!それでは、気を付けて帰って下さい。君に何かあると周りが喧しいんでね!」
「あはは…そう、だね。…骸、オレの話聞いてくれてありがとな。今日、骸に会えてよかったよ。」

そう言い残すと、ツナは歩きだした。
その後ろ姿から視線を逸らした途端骸は、不意に嫌な予感に駆られる。

―――もう、二度と会えないのではないか。
そんな不安が唐突によぎった。

「ちょ、綱吉く…!」

骸は思わず振り返り、ツナの背中に声を掛けようとするがまるで幻でも見ていたかのようにツナの姿はもうそこには無かった。

その時感じていた不安の原因を知るのは数日後―――。


ドタドタとけたたましい程の音を響かせ部屋へと入って来たクローム。
クロームの様子は何か焦っているようで、顔色は真っ青に染まっている。

「骸様!」
「一体、どうしたのですかクローム…そんなに慌てて?」
「ボ、ボスが…ボスが!!」
「綱吉くんがどうかしたのですか?」

骸はクロームの表情を見た時あの時感じた嫌な予感と同じものを感じた。
クロームは目に大粒の涙を溜め、必死に次の言葉を繋ぐ。

「ボスが、…ボスが――――死んだっ、て!学校の屋上から飛び降りたって…!!発見が遅れて病院に運ばれた時にはもう、手遅れだったみたいで…」

―――死んだ?
誰が…?
何故…?

骸はクロームの言葉をすぐに理解出来ずにいた。

「ボス、並中で苛めにあってたみたいで、その苛めてた人の中に嵐の人や雨の人達も居たって…!」

―――は?苛めの首謀者の中に獄寺隼人と山本武も居た?
一体何の冗談ですか…?

その時、唐突に以前聞かれた質問の意味を漸く骸は理解する。


「ねえ、骸はさ、六道輪廻を回ったんだろ?死ってどんな感じ?」
「じゃあさ、骸は俺が死んだら悲しい?」


あの時の綱吉くんの質問は彼らしくない―――死についての質問ばかり…。
それに僕は真面目に答えなかったばかりが、有ろうことか獄寺隼人や山本武に相談すれば良いなどと…。
既に彼らが綱吉くんの敵に回っていたら?
あの時既に彼の周りには誰も味方など居なかったのではないか?

彼はきっとあの日、自分に会いにいてくれたのだ。
最後の希望を持って―――。
なのに、僕ときたら…。

「僕は、僕は…なんて事を…!!」
「骸様…」
「綱吉くんは僕を頼って此処まで来たでしょうに、それを僕は突き放してしまった!彼からしたらもう仲間と呼べる人は僕しか居なかっただっただろうに、その僕が彼を!!」

あの時真面目に彼の話を聞いてあげていたらこんな事にはなっていなかったのではないか?
なら綱吉くんを殺したのは僕の様なものだ!
知らなかったとはいえ、なんて残酷な事を言ってしまったのだろう…。
少し考えれば、あの時の彼の様子が可笑しかった事に気付いていたのだから!

黙り込んでしまった骸にクロームはおずおずと話しかける。

「…骸様、それでこれ…」
「何ですか、これは…手紙?」
「ボスから骸様に…ボスの遺体のポケットに入ってたって…」

骸はクロームから引っ手繰る勢いでその手紙を受け取った。
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