リレー小説
□真実と虚実の不協和音(番外編1:最期に思うこと)
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辺りにあるのは、かつてはボンゴレ本部と呼ばれていた建物の成れの果てであるガレキ。
そして所々から出ている炎と煙だった。
すでに体は立ち上がることもままならない。
呼吸するたびにむせこみ、口から血が溢れ出てくる。
もう自分の命は長くないだろう。
自分が置かれている状況を示すような曇り空を寝転んだまま見ながら、雪華は他人事のように命の灯火が消えようとしている自分の体を見やった。
「あたしは…本当は一体何が欲しかったんだろう。・・・・・何がしたかったんだろう。」
今の自分とかつての自分を思いながら、雪華は思う。
他人を駒としてしか見なかった自分。
愛されるのが当たり前と思っていた自分。
他人は自分をお姫様のように崇め、騎士ごとく自分に仕えるのが当然と思っていた自分。
でも今なら分かる。
そんなふうに思っていた自分が、どれだけ馬鹿だったのかということが。
あの頃の自分は、あまりにも無知すぎた。
あまりにも物事を知らなすぎた。
だからこそ、気に入らないと思った子に対して、あれだけ残酷な事が出来たのだろうと思う。
けれど・・・・・。
「ほんと、馬鹿よねぇ〜。雪華を愛してくれるのも崇められるのも、他人という存在があってなのに。」
駒と見下していた他人が自分にいたからこそ、雪華は悲劇のヒロイン気取りで生徒達にチヤホヤされていた。
でもその他人がいなければ、愛される事もチヤホヤされる事もない。
だからこそ、他者を駒などと見下してみるべきではなかったのだ。
帰るべき家を失い、自分を守ってくれるはずの両親も失い、偽りで覆い隠していた真実が明らかになる事で自分の本性ですら晒け出された時・・・、今まで雪華の側にいた人間は誰もいなくなった。
そして残ったのは・・・。
「ボンゴレ10代目という肩書きだけだったわ。」
けれど、そのボンゴレももう終わりだ。
9代目と家光は自分達が逃げる時間稼ぎの為に、簡単に雪華をボンゴレ本部に置き去りにした。
ボスに仕えるべき守護者達も、アッサリと雪華を見捨てて逃げて行った。
そして敵対ファミリーに攻め込まれ、ボンゴレ本部はアッサリと陥落し、雪華に残されていたボンゴレ10代目という肩書きですらも、意味のないものに成り果てようとしている。
「こうしてみると結局・・・雪華には何も残らなかったわ。」
ボンヤリと空を見ながら、雪華を呟いた。