小説

□雷蔵と過ごす
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「三郎、皆部屋に帰ったよ」

「んー」


パタンと障子がしまる
それを合図に私はぎゅー、と雷蔵に抱き着いた


「もー、三郎ったら」


雷蔵は困った顔しながらも三郎を受け入れる
そんな優しいところも私の惚れた理由だった


「らいぞー…」

「ん?何、三郎」


雷蔵が頭を優しく撫でてくれる
それが気持ち良くて溶けてしまいになる


「雷蔵あったかい」

「三郎は冷たいね」


雷蔵がそっと私の頬に手をそえる
あはは、やっぱり頬も冷たいんだね、そういって雷蔵は薄く笑った

そんな小さな言動にもいつも以上に愛おしく思えた


「ね、あと少しで年が明けるんだよ」

「あぁ、そういえば…」

「僕たちも六年生になるんだよね」

「六年か…私達もあの先輩達の様になってしまうのだろうか」


私が苦笑いすると雷蔵も同じように苦笑いした


「でも、年が変わっても私達は私達なんだろうな」


え、と雷蔵が小さく声を漏らす
私は雷蔵に少し微笑み言葉を続けた


「私達は皆変わらないさ。それは雷蔵が一番よく知っているはずだろう?」

「…そうだね」


雷蔵は私の前髪をそっとあげると額に優しく唇を落とした

珍しい雷蔵からの口づけ
今私の顔は真っ赤に染まっているのだろうか
恥ずかしさから本能的に顔を雷蔵に埋めた

そのとき、どこかで静かに鐘の音が聞こえた気がした


「…明けちゃったみたいだね。三郎、あけましておめでとう。今年もよろしくね」

「…こちらこそ」


静かな空間、私達は笑いあった


「…雷蔵、好き」

「知ってるよ」

「大好き」

「うん、僕も……あ、少し違うかな」

「え、?」


うーんと短く考えてから、いつもの迷い癖はどこにいったのかすぐに答えが出たようだ


「僕は愛してる」

「なっ……!」

「三郎は?」

「……私も。」


雷蔵に顔を埋めているからわからないけど、雷蔵が軽く笑ったような気がした


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