★Gintama

□☆Rain And Hydrangea
1ページ/6ページ

女ってのは、どうしてこうも柔らかいのか。
鈍い思考を覚醒させて、真下で揺れる乳房を臨む。

「土方はん……土方……はん」

いやいやをする赤子のように首を左右に振りながら、女が伸ばした腕の内側。
汗で湿った柔肌に、抱き寄せられて従って、また同じ事を思った。

「柔らけぇのな。女のカラダってのは……よ」

今度は口から溢れた言葉を、女がふわりと掬い取る。

「おなごの身体が柔いのは、硬い殿方の全てをこうして……受け止める為でありんす」

紅の引かれた唇が裂け、チロリと舌が覗いて消える。
今しがたまで赤子のように悶えていたのに、女というのはとかく厄介な生き物だ。瞬時に変わるその表情は実に妖艶で、見惚れてしまいそうになる。

「……まぁ、確かにそうかもしれねぇなぁ」

俺は敢えて素っ気なく頷くと、視線を障子の向こうに移した。
障子というのは名ばかりの、殆ど紙も剥がれた桟の向こうに広がっているのは、寂れた旅籠の中庭に降る無数の雨粒。
剪定する者も居ない庭木はうっそりと生い茂り、苔むした庭石は天から注ぐ水滴に、まんじりともせずただ穿たれている。

気付いて在ったこの場所は、世界から切り離されたような静寂に満ち満ちていた。

サァァァというか細い雨音も、荒い己と女の呼吸も、乱れた着物の衣擦れの音も確かに聞こえる。
女の甘い啼き声も、繋がった下半身から聞こえる卑猥な水音も、確かに耳に入ってくる。
だが絶え間なく降りしきる雨に隔てられた此処は、まるで現と夢のあわいを漂う異空間のようだった。
組み敷いた柔らかな肢体を視界の外に締め出しながら俺は思う。
見惚れてそのまま絡めとられてしまったが最期ーーこのまま此処に囚われて、二度と晴れ渡る空を拝めることは叶わなくなっていただろうと。

「あ……ん。土方はん、気持ちイイ」

「そうか」

視線を戻して女を見下ろし、俺は深く息を吸い込む。
煙草はさすがに咥えていないが、紫煙のように煙った言葉を、刃の代わりに女にかざす。

「その態度、何処までが演技で何処からが本気だ?」

「……っ」

瞬間ヒュッと、女の細い喉が鳴った。
小さな悲鳴を押し殺すかのように。

「なぁ、教えてくれよ……」

促して、俺は怒張を突き入れる。

「水無月太夫」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ