★秋の扉★
□好きって言って。
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「野分!!今日早かったじゃね〜か!!!」
「はい!!!ただいまです!!」
疲れて帰ってきてもヒロさんの顔を見ると元気になれるなぁ…
ヒロさんと付き合って数年経つが年々ヒロさんの事が好きになる一方だ…
でも…たまに……どうしようもなく黒い感情が芽生える時もある
「でさぁ〜!!秋彦のやつが新しく書いた小説の感想を聞かせろって煩くてさ〜!!!」
ほら、今日も……
お酒を飲みながら宇佐見さんの話をするヒロさんに目をやる
文句を言いながらも表情は柔らかくて…
自分から笑顔が消えてくのが分かる
なんで……宇佐見さんの話なんか…
宇佐見さんは長年ヒロさんが好きだった人で…初恋の人。
今ではヒロさんは俺の事を好きになってくれている。それは俺も分かってる。
でも……俺の知らないヒロさんをいっぱい知ってる人だし、ヒロさんにとって特別で大切な人には変わらない…
「聞いてんのかぁ〜!?野分!?」
「聞いてますよ。ヒロさんは頼られてるんですね!」
「まぁ〜な!!!付き合いだけは無駄に長いしな〜!!」
にこにこと笑うヒロさんに返事をする代わりに俺も笑いかけたが心の中は少しも笑えてない
居なくなってしまえば良いのに……
死ぬとか、そんなんじゃなくて…
ヒロさんの記憶から丸ごと消えてくれないかな
ほんと、腹が立つ…
どうにもならない事に対して苛立って持っていた空の缶ビールを握り潰すと音に反応してヒロさんがこっちを見て首を傾げた
「……?どうした?」
「何でもないですよ。なんとなく潰しちゃっただけです。」
「ふ〜ん…。」
ヒロさんの事を笑わせる事が出来るのは俺だけで充分……
こんな事ばかり考えて頭がおかしくなりそうだ…
「……ヒロさん。」
「ん〜?」
ヒロさんの肩を抱き寄せてキスをする
俺だけを見てって意味を込めて深くキスをするとヒロさんに背中をポンポンと叩かれた
「お前はぁ〜〜!!!!キス長過ぎじゃ〜!アホ〜!!……ふぁ……キスされたら眠くなった。寝る!!!おやすみ…」
可愛く頬を膨らましてから相当酔ってたのかすぐに床に横になってしまった
ヒロさんの気持ち良さそうな寝顔を見るとさっきまでの歪んだ感情が薄れてく
俺はあと何回こんな考えを繰り返せば……
続きます♪