BOOK

□全てが幸せに繋がって
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ふと思いました。



「私、結婚するんなら絶対柳くんだわ」



周りのぎょっとした空気を無視して、ちょうど隣に座っていた柳くんを覗き込む。
彼は読んでいた本をゆっくりと閉じ、「それは光栄だな」と一言。



「落ち着いてるし、優しいし、かといって甘すぎないでしょ?」
「ほう」
「こういう下らない話題に乗ってくれるところも、私的には高ポイント」
「褒めすぎじゃないか?」
「いやいや常々思っていたんだよ」


謙遜を交えつつお互いを褒めちぎり話題に花を咲かせていると、「ちょっといいかな」幸村くんが手を挙げた。



「俺の記憶に間違いがなかったら、君の彼氏は仁王だよね?」
「え…そうだよ?」
「その、こいつ何言ってんの?みたいな顔やめてくれない?」
「すいません」
「まあいいけど」
「あざす!」
「その彼氏がさ、すごく鬱陶しいからどうにかしてくれないか」



眩しい笑顔の幸村くんの細長い人差し指の先には、怨めしそうにこちらを睨むまさの姿。
じとーーーーーーーーという効果音が聞こえてきそうなその視線は私だけに向けられ、思わずあらら…と声が零れた。
睨むまさ。それを一身に受け止める私。
意外と薄情なみんなはさっさと身仕度を始めて帰ってしまう。
隣を見ると…、え!柳くんまで帰っちゃうわけ!?
無常にもパタリと閉まるドアを唖然と見つめた。
そうしてこの広いとは言えない空間に取り残されたのはまさと私の2人だけとなった、わけ、だが。



「まさ、みんな帰っちゃったよ」
「………………………」
「私たちも帰ろーよー」
「………………………」



私が何と言ってもだんまりを決め込むまさ。
機嫌が直る兆しは見つからない。



「そんなに柳を好いとーなら、柳と帰ればいい」
「まさー」
「好き合ってると思ってたのは俺だけか」
「まーさーー」
「俺は葵だけじゃっちゅーとるに」
「まさ、ごめんね」
「謝っても許さん」
「ええええー困る!」



じゃあどうすればいいのよ!とまさの胸ぐらを掴んでゆらゆら揺らす。
しかし、鬱陶しそうに手を払ってツーンとそっぽを向いてしまう。



「拗ねちゃった?」
「怒っとるんじゃ」
「だって柳くんて素敵なメンズじゃないですかー」
「……………………」
「は!とうとう口すら利いてくれなくなった…!」
「当然じゃ」
「あ、喋った!」



「…浮気じゃ、しかも俺の目の前で、大胆な犯行」
「あんなの浮気のうの字にも入らないよーだ」
「こ!こにきて言い訳するか普通…!」
「ばーか。まさが1番だからこそまさの前でああいう会話が出来るんじゃん」
「!」
「それにまさだって、可愛い子がいたら可愛いなーって思うでしょ?」
「おも、おも」
「思うでしょ?」
「ときどき、いや、すごく稀に………………」
「でしょ?でもごめんね、絶対っていうのは言い過ぎたかも」
「……………、こそで謝られたら俺がガキみたいじゃ」
「あたしは気にしてない」
「……こっち来て」



眉間に皺は寄ったままだが、少し照れ臭そうに手招きをされて、それに素直に従う。
やんわりと腕を絡めとられ、ぎゅっと抱き締められる。
まさの匂いと、熱に支配されて頭がくらくらした。
これ、すごく好き。
とっても幸せな気分になる。



「まさ格好良い、可愛い、子供、優しい、好き」
「可愛いと子供はいらん…」
「いるいる!私は全部好き!」



格好良いくせに可愛くて、意外と我が儘。
そんな彼と、今日も私は幸せを噛み締めながらキスをする。






――――――――――
仁王は可愛くてもよし。
スレててもよし。

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