BOOK

□業火絢爛
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―何の為に


―――常勝という誇りのために







「はっ…っ…!」


無音の中にボールを打つラケットの音が響く。
思いっきりラケットを振る手にはたくさんの証が刻まれている。
周りは闇が広がり、いくつかの街灯だけが辺りを照らす。


「…っ…!」


全力でボールを弾き返すと、黄色いテニスボールは高く飛び上がった。


「はぁっ…っ…」


どさっと腰を下ろし、コートに両手をついた。
息があがり肩が上下する。



―まだだ。

赤也派左腕で汗を拭い、星空を見上げた。



立海の常勝は全て明日にかかっている。

明日の決勝で全てが決まる。

今まで走ってきた道も、これからの未来も。



―でも俺は…


泣き言を言う気も、逃げる気もない。

俺の目の前にあるのは勝利への道だけだ。


"精一杯やったのなら、負けても悔いはない"

あ?そんな甘えた言葉、俺達には必要じゃない。


「冗談じゃないぜ。遊びじゃねーんだよ」


勝負は勝つか負けるかだ。

勝者になるか敗者になるか。


常勝が背負う意味の重さ。

それがどれほど大事なのか。





立海の常勝は、俺達が受け継ぐ。




右手に作った拳が明日を待ち望むかのように小さく震えた。














パタンと音を立てて携帯を折りたたむ。
受信ボックスはみんなからの応援メールで埋まっていく。


「もう、明日で全部決まるのかよぃ」


俺はベッドの上で胡坐をかき、窓から見える星空を見つめた。




今まで積み上げてきたもの。

努力、自信、力、信頼、

――仲間…



決して平坦な道ではなかった。

後悔も、涙も、不安も、全てを乗り越えてきたんだ。

1人も欠けてはならない。

俺達にはどこのどんなチームにも負けない絆がある。

あの日、あの場所で、あいつの苦痛を聞いた時に全員で誓ったんだ。




手にするものは勝利だけだ。

求めるものは、完勝だけだ。








今、再び常勝の名を取り戻す。







fin






+++
夢小説でもなんでもなくてすいません!業火絢爛をベースにして小説が書きたいとずっと思っていたのですが、こんな形になってしまいました。
設定は全国大会決勝戦前夜です。関東優勝を掴むことができなかった王者立海の強い思いが書けていればいいなと思います。敢えてこの2人にしました。
にしても業火絢爛は本当にかっこいい曲ですよね!いつも聞くたびに「常勝立海いいい!」ってなります!

ヰチゴ

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