長編

□犯罪者
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***

チャイムの音とともに、校長のだるい話が終わった。
あとは教室に戻ってHRを終えれば、いよいよ夏休みだ。

特に楽しみだったわけじゃないけど、ただボーッと授業を聞くために学校に来るのよりはマシ。


俺は田辺佑也(タナベ ユウヤ)。
現在、私立多川高校の2年生。
趣味はこれといってないけど、最近は小説にちょっとハマってて、ベタだけどシャーロックホームズとか赤川次郎とか、推理系をよく読む。
それから、人間観察…まあこれは趣味っていうか癖かな。


***

体育館から教室に戻ると、クラスメートはまだ数人しかいなかった。

とりあえず自分の席に座って、読みかけだった三毛猫ホームズの続きを読む。

俺的には三毛猫シリーズより、魔女シリーズ(?)のほうが結構好きだったり。
まあホームズも可愛いんだけど、猫にホームズって名前はどうなんだ。とか思って。
…いや、すげー個人的な話なんだけどさ。
しかも嫌いな訳じゃないし。


そんなことを思っているうちに、だんだんと周りが騒がしくなってきた。

顔を上げるとクラスメート達が教室に戻ってきていて、みんな休み時間のように騒いでいる。
隣の席の中野なんて、ヘッドフォンを付けずに携帯で音楽を流して、しかも歌ってるし。

「めぇーると、溶けてしまいそおー…!」

中野の声とともに、ロボットみたいな声が教室内に響き渡って、かなり異質。

こーいーにーこぉいなーんてしなぁいよーわーたーしー

「…中野、それ何の曲?」
「うぇッ!田辺知んねーのかよ!ミクだよミク!俺にボカロを語らせたらなあ…」

中野の説明によると、どうやらボーカロイドっていう機械(?)が歌ってる曲らしい。

動画サイトで流行ってるっていうのは聞いたことあったけど…
実際聴くのは初めてだし、中野いわく人の声にしか聴こえないというその声は、俺からしたらどう聴いてもロボットにしか思えなかった。

「…あとはさぁ、リンレンっていう双子キャラもいるわけよ!」

中野が熱く語っている。
ぶっちゃけ気まぐれに尋ねただけだし、ボーカロイドの話はもうどうでもいい。

「中野ぉ!リンの曲かけてよ!」

中野と仲が良い鈴木さんが遠くからリクエストをしてきた。
鈴木さんもボーカロイドが好きらしい。

「わかったわかった…でさぁ田辺、そのリンレンは双子じゃないって話なんだけど…」


あ…飛行機雲。


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