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□腕相撲
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政宗が笑顔で言った。



「Hey,小十郎!!腕相撲しようぜ!!」



「…………」


小十郎はゴシゴシと目を擦った。

「どうかしたか?」

「いえ…確か前にもこんなことがあったような気が…」

「Ah?そうだったか?気のせいだろ」

「しかし……ああ、確かあの時はスイカ割りを…」


「んなこたぁどうでもいい!俺は暇なんだ!腕相撲やろうぜ!!」

「……はい?」

どうして暇だと腕相撲をするという事になるのか小十郎は理解できなかった。

けれど目の前の政宗はキラキラと顔を輝かせ、腕を捲っていた。



…なぜこんなにもやる気があるんだ…。



「ハア…」


腕相撲なんて、政宗様が子供の時以来だ。


「まあいいですけど…」


「よし!んじゃあっち行くぞ!台を用意してある!」

政宗が指差す方を見ると、そこには高く積まれた段ボール箱があった。

六個程段ボール箱を使い、立ったままでも腕相撲ができるよう工夫されていた。

更に強度にも気を配り、ビッチリとガムテープが貼られている。


「おおっと!布をかけるのを忘れてたぜ」


すると政宗は赤い布を手に持ち、その段ボールに駆け寄ると、それを被せてバサッと覆った。


「競技場の出来上がりだ!」


小十郎は涙が出そうになった。


「………余程暇だったんですね」


「ああ!」


「…………」


せめて否定して欲しかった…。



「早くやろうぜ!」


「本気ですか」


「当たり前だ!」




暇だったら、剣の鍛練でもしていればいいのに…。




小十郎は呆れながら、トボトボとその段ボー…競技場へと足を運んだ。




あれ…?


「そういえば政宗様」


「What?」


もしかしたら、これは禁句だったかもしれない。


けれど小十郎が気が付いた時には遅かった。もうその言葉は政宗の耳に届いてしまっていた。






「政宗様……一度も、腕相撲でこの小十郎に勝てたことありませんよね?」






「……」
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