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□たまには後ろも振り返ろう
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政宗様がまだ梵天丸様だった頃。


俺は毎日毎日、元気な主に振り回されていた。






「こじゅ!こっちに来てくれ!」

「何ですか?」

庭で何やら土を掘って作業していた梵天丸様に呼ばれ、俺は小走りで駆け寄った。

「こっちこっち!」

「はい」

両手を振って、小さな体で自分をアピールする梵天丸様。

その子供らしさに思わず笑みがこぼれた。


右目が病気で見えなくなり、痛々しく包帯を巻いているにも関わらずああして元気に遊んでいる姿を見ると、こっちまで元気づけられる…。

やはり子供は元気な方がいいな。


「こじゅー!早く早く!」

「はいはい」



しかしこの時の俺は、何も気付かなかった。



ズボッ!ビチャッ!!



「ん…?」



梵天丸様の作った落とし穴に引っかかるまでは…。


「…………」


視界が右側に傾いた。

右足が沈んだからだ。

嫌な音を立てて。

下を見ると、右足首が隠れる程の浅い落とし穴だったが、中にはご丁寧に水まで入っていた。

ゆっくり引き抜く。

グチョ…と泥だらけになった右足が現れた。


「よし、成功した!今度は右足サイズじゃなくて、こじゅが丸々埋まるくらいの深さじゃないとな」

ニコニコと笑う梵天丸になるべく穏やかに話しかけた。


「…梵天丸様」


「これな、水を入れるの結構大変だったんだぞ!最初に土で形を作って、そこに少しずつ水を…」


俺からとっくに笑顔は消えていた。


「梵天丸様」


「ん、何だ?こじゅ」

「少しお話したいことがございます」

「…え?何でお前、そんな怖い顔して…」

梵天丸様の首根っこを掴んだ。


「お時間よろしいでしょうか?」

「あ…あの…えっと」

「…よろしいですね?」

「…ご…ごめんなさ…うわぁぁぁぁぁ!」




その後、俺の説教三時間コースをたっぷり梵天丸様が堪能したのは言うまでもない。
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