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□Let's! ‐SUIKAWARI‐
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それは、よく晴れたある夏の昼下がりの出来事だった。
「Hey,小十郎!!スイカ割りしようぜ!!」
部屋着姿の政宗は突如、小十郎の目の前に、ドン!と大きくみずみずしいスイカを置いた。
「………………はい?」
「旨そうだろ!?さっき城下町で買ってきたんだよ!!ああ、早く割りてぇ!!!」
ニヤニヤしながらベシッとスイカを叩く政宗。
まず状況がさっぱり理解出来ず、小十郎は既にテンションMAXの主に声をかけた。
「あの……政宗様?」
「おおっと、傷がついちまったらヤベェな……ん、何だ?What?」
今度はスイカを優しく撫で始める政宗。
「…………」
小十郎はその行動を冷ややかに見つめながらも、言葉を続けた。
「伺いたいことは幾つかあるのですが……まず、一番お聞きしたいことを聞かせていただきまする。何故突然、スイカを割るというお考えに?」
「Ha!決まってんだろ?暑いからだよ!!」
「…聞いた小十郎も馬鹿でした」
「……おい、“も”って何だよ」
「ちなみに、どこでやるおつもりですか?」
「…シカトか。Coolだな小十郎。どこでやるっつっても、ここじゃいけねぇのか」
「いけませんよ!!」
どうして自分の部屋を主の手によってスイカまみれにされなくてはいけないのか、小十郎は当然のごとく反対した。
「Ah…分かったよ。庭でやる」
小十郎の気迫に政宗が折れた。
「当たり前です!」
「けどな…スイカ重てぇんだよ。小十郎、運んでくれ」
「……っ!!?」
そんな理由でこの方は俺の部屋で…!!
「…あなたという人はぁぁ!!」
小十郎のお説教は、「スイカが腐る」という政宗の理由(言い訳)でなんとか三十分で終わったのだった。
「よし!始めるか!!」
肩まで袖をまくり気合い充分な政宗。
きちんと(小十郎によって)庭の真ん中に置かれたスイカは、相変わらずみずみずしく光っていた。
「…時に政宗様」
「ああ?何だ?」
「スイカ割りとは、目隠しをし、スイカの位置を当て棒で叩き割る遊びですよね?」
「そうだ。それがどうかしたか」
「…政宗様、ご自分の格好は何かおかしいことに気が付かれませぬか?」
政宗は改めて下から上へと自分の姿を確認した。
部屋着に草履。右手には刀の鞘。腕まくりして露出した両肩。勿論顔には眼帯。
「…ああそうか。目隠しがねぇ」
「違います!ご自身が持っているそれは何ですか!?何故鞘などを持っておられるのです!?」
小十郎の的確なツッコミに政宗は改めて右手を見た。
「何でって…目を隠してやんだから、真剣使うと危ねぇだろ」
「そういうことではありませぬ!政宗様、刀の鞘というのは決してスイカを割るためにあるのではありませんぞ!?」
「そんなこと分かってる。ただ、ピッタリな道具がねぇんだよ」
「だからといって…鞘はお止めください。後生の頼みです」
…いいのか、後生の頼みが“刀の鞘でスイカを割るな”で。
「…分かった分かった。これは使わねぇよ。けどよ、代わりに何で割るんだ?その辺に落ちてる小枝じゃ無理だ。それに目隠しはどこで調達する?」
「ふうむ…」
たかがスイカ割りに何故こんなに苦労しなければいけないのか、と思った小十郎だったが、口には出さなかった。
「…俺にいい考えがあるぜ」
政宗が不敵に笑った。
「はい、いかが致しますか」
「ちと面倒だが、文を書く」
「…誰に宛ててでしょうか?」
「真田幸村だ」
「!!」
政宗の口から出た人物の名に小十郎は目を見開く。
真田といえば敵…いや、ライバル。
どうして今、この状況であいつを…?
「…分かりました。すぐに用意致します」
しかし何かの思惑があってこそなのだろうと小十郎は大人しく紙と筆を用意した。
「Ok.良い返事だといいがな…」