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□ある満月の晩
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満月の晩。
お館様に仕事の結果を報告し、大分疲れていたが俺様は自分の部屋には戻らず、真田の旦那の部屋をノックした。
「旦那、まだ起きてる?」
返事はすぐ帰ってきた。
「おお、佐助!帰ったか!勿論起きておる!」
ガラリと襖を開けると、旦那はニコニコしながら俺様を見ていた。
「佐助、今日の務めもご苦労であった!しっかり疲れを癒すがよい!」
「はいはい」
俺様もつい笑顔になる。
だが、次の旦那の台詞で、俺様から笑顔は消えた。
「…して、佐助。某に何用か?」
ただあんたの顔を見たかっただけだよ、という女々しい台詞を俺様が言えるはずもなく、そういった本当の理由を隠すために用意した代物を、旦那に差し出した。
「…これを渡すためにね」
旦那の好きそうな甘味。
任務の帰りに買ったものだ。
「お…おおおお!!」
震える手で俺様から甘味を受け取ると、旦那は本日一番の笑顔を向けた。
ああ…この笑顔。
こんな笑顔を見たら、疲れなんてすぐぶっ飛ぶよ。
「これは…某の好物ではないか!恩にきる佐助ぇぇぇ!!」
「そりゃー良かっ…うおっ!?」
興奮した旦那は、俺様に抱きついてきた。
「仕事で疲れているというのに、主の好物を用意するという、この健気さ…某は心を打たれた!お主はまさに部下の鏡でござる!!」
「…い…痛い痛い!旦那、力強過ぎ!」
けど俺様の頬が緩んじまうのは、仕方ないことだと思う。
するとその時。
「幸村、佐助。本日の働きもご苦労じゃった」