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□竜と右目
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「おい、小十郎はどこだ?」

俺は廊下をスタスタ歩き、丁度そこにいた一人の部下に聞いた。

「小十郎様は畑にいらっしゃいます。何かご用がありましたら、お伝えしておきますが」

「…いや、いい。用はねぇ」

自分でもなぜ小十郎の居所を聞いたの分からなかった。

ただなんとなく、本当になんとなく、気になっただけだ。

そういやあいつ、どこにいんのかな…と。

「…?」

不思議そうな顔で俺を見る部下。

「……」

ふいと顔を反らせ、俺は自室へ戻った。




「はあ…」

どうしたんだ?俺は。

変な胸騒ぎがする…ってわけでもねぇ。

それなのに何で、あいつの顔が見てぇんだ?

あいつに会いたくなるんだ?


分かんねー…。



この気持ちを抱き始めたのはいつだったか、それすらも覚えていない。



ただ、気が付いたら、



あいつの傍にいねぇと、不安になる…。



そういう体になってた。






ふと呟く。




「小十郎…」


「何でございましょう」


「っ!!?」


すると、突然すぐ近くから声がした。


気付くと、目の前に、今俺の心を一番支配している人物が座っている。


「こ…小十郎!?何でいんだよ!つかいつの間に…」

ドキンドキンと心臓が跳ねる。

この胸の高鳴りは、ただ驚いたからなのか、それとも別の…。

…とにもかくにも俺が小十郎の存在にビビっている時、とうの本人は淡々と説明を始めた。

「つい先程、政宗様がこの小十郎を探しておられたという伝言を聞きました。なので畑仕事は中断させ、このお部屋まで足を運びました。すると部屋の襖が空いておりましたので、真に勝手ながら入らせていただき、更には政宗様がボソリと小十郎の名前を呼んでいらしたので、お返事をさせていただいた所存でございます」

「あ…ああ…そうか。細かい説明Thank you」

少しずつ落ち着いてきた動悸。

だが。



「…して、何用でございますか?」



当然来るだろうその疑問の答えを考えていなかった俺は、軽く焦った。


「Ahー…最近、野菜の調子はどうだ」


「野菜…?」


いい理由が思いつかず苦し紛れに放った質問。


思った通り、小十郎は怪しいものを見るかのような視線を俺に投げつけた。
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