お題小説
□狼まであと何秒?
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二人の間に沈黙が流れる。
もう彼此この状態だ。どちらも動かず、ただお互いを見つめているだけだ。
『………あのね、佐助』
「………うん」
『別に佐助のことを嫌って手を払い除けたんじゃないの』
「それはさっき聞いたけど?」
『そうだよね、ごめん。なんか、頭の中がごちゃごちゃしてて…』
「ゆっくりでいいよ、まだ時間はあるしさ」
『………ありがとう』
俯きながら微笑む実弥の顔を見た佐助は、ドキッとした。
「(…何か色っぽいんだけど)」
佐助は、実弥にバレないように明後日の方向に顔を向けた。
『さっきね、』
「あ、うん!」
『気になる人とかどうとか言ってたじゃん?』
「そういえばしたねー」
『その人ね、多分──』
そこで言うのをやめた実弥。佐助の心臓はバクバクと煩い程音がなっている。
その先を聞きたい、けど聞きたくない──
その思いがあちこち揺れるのだ。
「そ、その人は…?」
『…………………佐助なの』
「……………は?」
まさかの答えに、佐助は目が点になる。実弥の気になる人は佐助だった。その事実に嘘偽りなどない。
『こんな感情、初めてだから…自信はまだないんだけど…。けど、この胸の苦しみとか、佐助の笑顔を見ただけで嬉しくなるのは、きっと佐助が好きなんだと思うんだよね』
「実弥ちゃん………」
ツラツラと素直な気持ちを言葉にする。自分では充分に“恋”の感情が分からない。
しかし、慶次から“恋とはなんたるか”を散々聞かされ、それを真剣に聞いていた実弥は、表上ではなんとなしには分かるのだ。
『本当は、自分の気持ちに整理がついて、落ち着いたら言おうと思ってたんだけどねー…。
………あれ?これもさっき言った気がする…』
と、苦笑いする実弥。一方の佐助は自分の理性を必死に押さえていた。
「(……今回は竜の旦那に感謝しなきゃね……)」
と、意外な人物に感謝の言葉を心中で述べる。
『改めて言うよ。私は…佐助のことが好き…好きだよ』
顔を真っ赤にしながらも必死に想いを伝える。その姿に佐助は、優しい表情になった。
そして、佐助は実弥のことを抱き寄せた。
『!!』
「実弥ちゃん、ありがとう…嬉しいよ」
『さ、すけ……?』
「俺様も…いや、俺もね実弥ちゃんのこと好きなんだよ?」
『えっ!?』
「もー…実弥ちゃんが皆に愛想振りまくから、みーんな実弥ちゃんのこと好きになる一方で俺様焦ったんだから…」
『えっ…、え?………えぇ!?』
実弥は、皆が自分のことを好きになっているなんて気付かなかったため、その言葉に驚いた。
思わず身体を離して佐助の顔を見る。その佐助の顔は怪しい笑みを浮かべていた。
「実弥ちゃん、鈍感過ぎ」
『ご、ごめんなさい…』
「謝ってほしいんじゃないよ。ただ、この俺様を焦らせた罪は大きいから、覚悟しておいて?」
そう言いながらウインクする佐助に、実弥は
『うっ………………はい』
口を尖らせながら、小さく返事をするしかなかった。
しかし、その後の実弥の顔は、雲一つもない晴れ晴れとした顔をしていた。
「(俺様らしくないな…。最初は警戒してた相手に恋心抱いて、振り回されて…今こうして胸が詰まりそうなくらい喜んでるし…。
やっぱり実弥ちゃんには適わないなー…。ていうか俺様忍失格じゃね?)」
急に黙り込んだ佐助を、疑問に思ったのか実弥が首を傾げた。
『……佐助?』
「な、何…?」
『………今から我が儘言うけど、いい?』
「え、あ、うん」
何だろう、と今度は佐助が首を傾げる。
『これからも一緒にいさせて!これからは友人としてじゃなくて…こ、恋人とし──』
「実弥ちゃん、それ反則!」
実弥の言葉を遮ってそう言った佐助は、実弥のことを再び抱き締める。
そして、
──チュッ
『っ!?』
リップ音を立てながらキスを交わす。
一度目は触れるだけの短いキス。しかし、次は少し長いキスだった。
『…ん………んぅ……っは』
息が続かないのか、実弥は苦しそうに息を洩らす。
そして、佐助が唇を離す。
『はぁ……佐助……』
「アハー。ヤバイかも…」
潤んだ瞳に、羞恥で真っ赤に染まっている頬、荒い呼吸。
佐助の理性も、後もう少しで崩れそうだ。
狼まであと何秒?
お題小説終了ー!!
初だったんですが、楽しくやらせていただきました!
相変わらずグダグダなんですが(汗)まぁ、ご愛嬌ということで(殴,蹴)
(C)確かに恋だった
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