お題小説
□キミの心に触れさせて
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「じゃあちょっと足捲るよー」
『……はーい』
あの後実弥の部屋に戻り、素早く佐助が手当て道具を持ってきた。
そして、着物の裾を捲る。
「それじゃあ、先に固定するから捻った方向と逆の方に足を向けてくれる?」
『あ、うん』
実弥は、捻った方向と逆の方向に足を向ける。すると、先程まで感じなかった痛さが込み上がってきた。
『っつー……』
「やっぱり痛いんじゃん」
『なんか…いきなり痛くなってきちゃった…』
「さっきまでは必死に竜の旦那から逃げてたからねー」
先程の出来事を思い浮かべながら、足首を包帯で固定し始める。
『政宗はさー、何で私に付きまとうんだろうねー…』
「え……(それ聞いちゃダメでしょ)」
『そんなに奥州に行ってほしいのかなぁ?』
「アハー。どうだろうね?」
佐助は政宗が実弥のことを追い掛ける理由を知っている。
しかし、それを敢えて言わないのは、もし“政宗は実弥のことが異性として好きだ”と言うことを伝えて、実弥も政宗が好きだとしたら…
「(…堪えられない気がする…)」
だから、言えないのだ。
包帯で実弥の足を固定した佐助は、に聞いてみたいことをこの際に聞いてみることにした。
「そういえばさ、実弥ちゃんは異性として好きな人いないの?」
『えぇ?うーん…考えたことなかったなー。どうして?』
「いや、なんとなく。実弥ちゃん可愛いのに前の時代では恋人もいなかったって聞いたからさ。
こっちにきて気になる人とかいないのかなーって」
『可愛くないってば!
けど、気になる人…かぁー…。まぁいるっちゃーいるのかな?』
「えっ、ホントに!?」
驚いたことに、実弥はこちらの世界で好きな相手、もしくは気になる人がいるらしい。
その事実を聞いた佐助は目を大きく見開き、その相手を聞き出そうと頑張る。
「ちょっと、それ誰!?」
『えぇー?言わないよー』
「お願い!俺様にだけでいいからさ!教えて?」
『ダーメ!!まだ自分の気持ちに整理ついてないからさ。整理がついたら言ってあげるよ』
「それはいつになるのさ…」
『んー…分かんない!』
その答えを聞いた佐助は、はぁっと溜め息をついた。
「(俺様をいつまで待たせるつもりなんだか…)」
そう思いながら、用意した氷を袋に水と一緒にいれて袋の入り口を閉じる。
「それじゃ、ここに横になって。足はこの座布団の上に乗せてねー」
『んー』
ゆっくり寝転がり、言われた通り座布団の上に足を乗せる。
「じゃあ、次は足冷やすから」
『うぅ…それが一番嫌かも。もっと暑い日ならなー…』
「仕方ないでしょー?はい、我慢我慢」
『うっ…!冷たっ!!』
足首の患部に氷入りの水袋を当てられ、とても冷たい。
『あー…でも麻痺してきたー』
「そう。なら暫くこのままでいてね」
『了解ー』
「いい返事」
そう言って佐助はニコリと笑う。
『!!』
そして、実弥はまた顔が赤く染まる。急いで明後日の方向に顔を向けるが、今度はバッチリ見られてしまった。
「……実弥ちゃん?」
『うゎあはい!!』
「変な返事…何で顔が赤いの?熱も一緒に出ちゃった?」
佐助は実弥の額に手を持っていこうとする。
しかし──
『っ……いやっ!!』
バシッ!
「!?」
佐助の手は実弥によって弾かれてしまった。
その行為に、少し驚いた佐助だが、次には無表情になる。
「……実弥ちゃん、俺様のこと嫌いになった?」
『はっ!ち、違う…違うの佐助!!』
「じゃあ説明して?言わなきゃ分からないことだって、俺様にはあるよ?」
『そ…そう、だよね…』
実弥は唇をキュッと結ぶと、意を決したように起き上がる。
キミの心に触れさせて
次ラスト!!
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