お題小説
□眠るキミに秘密の愛を
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招かざる訪問者達をなんとか帰らすことに成功し、静まり返った上田城では幸村と佐助、実弥が一緒に夕餉をとっていた。
『今日は佐助も一緒だー!!』
「実弥ちゃんが一緒に食べたいって言ったんじゃん。本当は一緒には食べないんだけど」
「うむ。人数が多い方が食事も美味いものだ」
『そうだよねー。これから佐助も一緒に食べようよ!』
「それはできないよ」
『何でー!?』
できない、とはっきり言われショックを受けた実弥は、食事する手を止めた。
『何で駄目なの!?別に幸村だって許可してるんだから、いいじゃない!!』
「あのねー、俺様の仕事分かってる?忍なんだよ?分かる?忍って言うのはあんまり姿を現さないものなの!」
『………………今更それを言うかね。幸村の保護者さん?』
「…それ、言わないでくれる?悲しくなるから」
と、泣くフリをする佐助。彼は天然の保護者肌なため、幸村のこととなるとついつい出てきてしまうのだ。
「とにかく、駄目なものは駄目!」
『むーっ!幸村、命令してよ!佐助もこれから私達と一緒に食事を取ることって!!』
それに反応した幸村は、実弥と同じように食事していた手を止めて、佐助に向かってこう言い放った。
「佐助ぇぇ!!実弥殿の言ったことをそのまま命令する!!!!」
「ちょっと旦那!?」
「佐助、お主は実弥殿を悲しませることを平気でするのか!?」
「いや、そういうワケじゃないけど…旦那だって分かってるでしょ!?俺様忍なんだからさー…」
「今更何を言うかー!!」
食事中にも関わらず、幸村は佐助に殴りかかる。それを佐助は、いとも簡単に避けてしまう。
「あっぶねー…」
「さぁすけぇぇ!!!!」
「あぁーもう、分かった!分かったってーの!!だから殴りかからないで、旦那!!!!」
もう嫌だと言わんばかりに、佐助は大きな声で了承の声を上げる。
それを聞いた幸村は、殴りかかるのをやめ、元の場所に落ち着いた。
佐助も元の場所に座り直し、考えた。
「(あぁ、もう!俺って実弥ちゃんに振り回されてない!?旦那も一緒だけどね…)」
『わぁーい!ありがとう、幸村、佐助!!』
「「!!」」
しかし、その考えも実弥の笑顔を見るだけで癒されていくのだ。
「どういたしましてー(アハー…ヤバイ。可愛すぎるんだけど)」
「れ、礼には及ばん!(実弥殿の笑顔…あ、愛らしいでござる…)」
主従揃って同じような考えをしているとは実弥は知らず、絶えず笑顔で再び食事に手をつけていた。
*******
暫らく三人は、その場で談笑していたが、実弥はいつの間にか座ったまま寝てしまっていた。
「……あれ?実弥ちゃん、寝ちゃってる…?」
「本当でござる…佐助、起こさないように実弥殿を部屋へ」
「了解、っと」
座ったまま寝ているなど、常人ではできないことをしてしまっている辺り、実弥は凄いと二人は思った。
「それじゃあ旦那、また何かあったら呼んでね」
「うむ。頼んだ」
「はいはーい(役得最高ー!)」
幸村は、佐助が心の中で思っていることなど知らないまま、実弥を姫抱きにしている佐助を見送った。
佐助が、実弥の部屋へ着くと、器用に布団を敷き始める。
「よいしょ…っと」
その上に実弥を静かに下ろし、掛け布団を起こさないようにゆっくり掛ける。
『んー……』
「(ヤバッ!起こした!?)」
『……えへへー』
「Σビクッ」
起こしたかと思いきや、ただたんに夢を見ているようで、いきなりニヤッと笑う。
それに驚いた佐助は、身体が微かに跳ねる。
「あー…もう、驚かさないでよー、実弥ちゃん」
と言いながらも顔はとても穏やかな笑顔だった。
「(全く…可愛い寝顔しちゃって…。ホンットに隙だらけだね)」
そう心の中で言うと、実弥が眠っている横に座って実弥のことをじっと見ていた。
すると──
『…さ…すけぇ…』
実弥が、佐助のことを呼んだ。最初は驚いたが、それに少し嬉しくなった佐助は、優しく問い掛ける。
「ん?何?」
『…………………オカン』
ズルッ
実弥の言葉に思いっきり転けた佐助は、実弥の体に自分が当たらないように気をつけた。
「アハー。ホントいい度胸してるね、実弥ちゃん…」
そう呟くと、イタズラに笑い、実弥に顔を近付けた。
そして──
「実弥ちゃんが悪いんだからね?」
静かに口付けを落とした。
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