紅眼の少女
□第五章 後編
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「───半兵衛、どこに……こんなところにいたのか……」
ものすごい大きい人が出てきて、ビクッと身体を揺らす。
「あぁ、秀吉。すまない、この子が山賊に襲われていたからね」
「なんと!!怪我はないか?」
『あ……、うん、大丈…夫』
見た目に反して、とても優しい人だったようだ。私、失礼な反応しちゃったな…。
「それでね、秀吉。この子、名前がないらしいんだ」
「何故名前がないのだ?」
『あ…え、と……』
私が左眼を隠すように髪を触り、明らかな動揺をしていると、何かを汲み取ってくれたらしくそれ以上は聞かないでくれた。
「……さて、そろそろ帰ろうか秀吉。かなり遅くなってしまったね」
「うむ。それではまたな、女子(おなご)。また会えると良いな」
そう言ってフッ、と笑うと、後ろを向いて帰ろうとした。私はその背中に、慌てて声をかけた。
『待って!!』
二人が振り返る。私はこれを言って良いものか否か迷ったが、口を開いた。
『私を……一緒に連れて行って!!』
思い切って言ったものの、とてもいたたまれない気持ちになり、少し後悔した。
が───
「そう言うと思った。ねぇ、秀吉?」
「うむ。我のところに来るが良いぞ」
ニッと笑う二人を、目をパチパチさせながら見る。私が一緒に連れて行ってと言うのが分かっていたらしい。
しかし、そんな簡単にいいのか分からず、聞いた。
『…え…?そんな簡単に……いいの?』
「そんなに疑ってほしいなら幾らでも疑ってあげるけど?」
『い、いや!遠慮する!!』
そう必死に答えると、クスッ、と笑われた。
「それじゃあ、行こうか」
スッと手を差し伸べられた。私は戸惑ったけど、ありがたく手を取り、
『うん!』
と元気に返事をした。
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