紅眼の少女
□第五章 後編
1ページ/7ページ
凛とした第三者の声が聞こえてきた。あと一寸と言うところでピタッと手を止める。
…気配に気づけなかった。
そんなに夢中だったのだろうか。辺りを見渡しても第三者は見当たらない。
どこにいるのだろう、と辺りを探っていると、ガサッと音を立てて人が出てきた。
銀色の、癖のある髪で、男だろうがかなり細い十二、三くらいの男が出てきた。
身なりはかなり高貴な格好だ。腰に刀を挿していることから、どこかの武将の子なのだろう…。
私は、空いていた左手をその男に向ける。しかし、特に気にする風もなく近寄ってきたかと思うと、私が刀を突き付けていた男を鞭のような刀で斬った。
『!!』
突然のことに、私が突き付けていた男は、声を上げることもなく散っていった。
「……君は強いね。まだ幼いのに…しかも女の子…。何でこんなところにいるんだい?」
『…………………』
ジッと男を見つめる。新手では……ないのか?油断させておいて、いきなり襲い掛かってくるのではないか、と身構える。
「ん?あぁ、僕は敵じゃないよ。簡単に信じて貰えないかもしれないけどね」
そう言うと、刀を鞘に収めた。それを見て私も刀を鞘に収める。
「僕は竹中半兵衛。君の名前は?」
名前───
私に…………名前はない。こんな目だし、忌み嫌われてつけてくれなかったもの…。
「どうしたんだい?どこか痛むの?」
『違う……。私、名前が…ないの』
私がそう言うと、驚いた顔をしていた。
「名前がない、と言うのは珍しいね…。けど、困ったね…君のことを呼べない…」
うーん、と考えてる半兵衛さん。
すると、新たな気配が先程半兵衛さんが出てきた茂みから感じた。
.