紅眼の少女

□第零章
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『はぁ…はぁ…』





世界が闇に包まれた頃、一人の少女が森を駆けていた。左目に眼帯をし、髪は高いところで縛っている。その後ろから男が何人か、その少女を追いかけていた。





『…っち。しつこいなぁ……』





そんな言葉を洩らしながら、懸命に木の枝へ着地しては蹴って、次の枝へ枝へと逃げていた。





「追い駆けっこはもう終わりだ。…やれ」





後ろの男の内一人がそう命令すると、少女目がけて複数のクナイを投げた。





『!!?』





少女は瞬時に反応して、短刀でクナイを弾き返す。

――しかし。
足場が悪いのがたたって二つ、少女の身体に刺さった。一つは左肩に、もう一つは足首に。足首は少し擦った程度で済んだが、左肩はざっくりと刺さってしまった。





『ぐっ……』





左肩は、出血や痛み以外はどうってことない。しかし、足はまだ走らないといけない。擦ったとはいえ、この傷は大きい。



案の定、足首の傷が痛み、木の枝への着地に失敗して、そのまま地面に落ちてしまった。





『っ、しまっ!』





そう思ったのも束の間で、後ろの男達に追いつかれ、囲まれてしまった。





「観念しろ。貴様はあの御方から逃げられない」

『…ふん。あそこに戻るなんて、真っ平ごめんだね』

「生きてさえいればいい、との命令なのでな。力ずくで戻すだけだ」

『お前達が私に勝てるとでも?』

「お前は手負いだ。それに人数もこちらが有利。いくら貴様でも、我々が勝つのは目に見えている」





確かに言われてみればそうだ。肩と足首からどんどん血が流れている。選択肢は、男共に連れ戻されるか、勝ったとしても出血多量で死ぬかもしれない。

どちらにしろ、少女の先にあるのは闇だ。

少女は悔しそうに顔を歪め、肩を押さえながらジリジリと間合いをとった。





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