連載(碓氷寄り)
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あれからしばらく経ち、タイガに会ったときのことが頭のなかから薄れていった。
人間の脳ってすごい。
自分にとって都合の悪い記憶は早く消そうとしてくれる。
そして突然ですが今日、メイド・ラテは女性客限定の男装DAYです。
「うわ美咲…いやいや岬くんだなコレ…なんて男前…」
「褒めてるのか??それ…」
「当たり前ー!!」
今日の男装DAYは客数が心配だったようだけど、店長が持つ予約ノートには予約がいっぱいいっぱいだった。
逆に多いのも心配したけど、なんとかなる♪と店長が言っていた。
「あ、そうそう。ミサちゃんと美咲ちゃんはいつも通りやってくれたらいいからね!」
「モーニングセットでございます。
…コーヒーにお砂糖はおいれしますか??
どうぞ」
【さすがミサちゃん天然素材…!!】
ひゃー、美咲さすがだな…。
よし、私も頑張ろう!!
「お嬢様、お召し物が曲がっています。……これで大丈夫です」
リボンが曲がっていたのでちょこちょこと直してあげた。
今日はお触りOKらしいからな!!
「あの二人って、こう…すごいわよね…」
「さすがって感じかな…」
美咲をちらりと見れば、これまで見たことないほどに幸せそうだった。
いや、私もめっちゃ楽しいんだけどさ。
あ、そうそう。ちなみに一人称は“僕”なんだよね。
俺の方が良かったんだけどなんかこっちにしてって言われて。
「美咲ちゃん!ミサちゃんどこにいるか知らない!?」
「え??美咲なら多分裏にいると…」
「ありがとう!!」
…店長めっちゃ追い詰められてない…??
「あ、岬」
「エリカさん」
「お嬢様たち、スタッフとの会話を楽しまれてるから一組一組にかなり時間がかかるわよ…気をつけて」
……エリカさんがああいうってことはそんなにヤバいのかな…
「すみませーん!!」
「はい!!」
「オーダーいいですか??」
「どうぞ」
私は女の子二人の席に向かった。
なんていうかめっちゃ可愛いなこのこたち。
「あのっ、何て呼べばいいですかー??」
「僕は岬です。お好きなように呼んで頂けれb「きゃー!!僕っ子だ…!!ショタ顔してるもんね…!!」
…なるほどな。
店長が一人称を僕にした理由がやっとわかった。
私って外見はショタ顔なんだろうな、つまりは童顔。
「やっぱり岬くんは受け顔してるよねー!」
「わかるー!」
…マジで。私受け顔なのか…??
自分では攻めだとばかり思っているのに。
私はちょっと反論してみたくて口を開いた。
「やだなあ、お嬢様。僕は受けじゃなくて…総攻めですよ…??」
「「きゃー!!」」
なんか自分の中で目覚めてしまったかもしれない。
つか、会話ばっかしてたら効率悪いな…。
「ご注文はお決まりですか??」
「どれもいいからよくわかんなくて…」
「…なら、僕の好きなメニューでも…構いせんか?」
「はっ、はい…!!」
それからと言うものの、私と美咲(岬)でお嬢様たちをおもてなしし、無事1日が終わった。
てか一日が終わって拓海が厨房入っていることに気づいた。
「お疲れ様ー!!…でも、第2弾は少し様子を見なくちゃね…」
「えっ、」
店長の疲れ知らずの美咲は、第2弾やりたいやりたい!!と言い張っていた。
長くなりそうだから先に着替えることにした。
「はー…。拓海もおつかれー」
「副会長こそ」
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「僕なら大丈夫。楽しかったし。てか僕絶対攻めだと思うんだけど、お嬢様方みんな受けだっつーんだよな…
なぁ、拓海はどう思う??、て何故脱ぐよお前」
私が拓海のほうを振り向けば、拓海はなぜか上半身裸だった。
「汗かいたから中のシャツ脱ぎたかったのー。岬くんこそ早く着替えれば??」
「…おう」
急かされた私は上に来ていたものを脱ぎ、シャツのボタンを外しはじめる。
「…副会長、ほんとに着替えるつもり??」
「はぁ??着替えろって言ったのはおま「誘ってるの??」…拓海??」
気づけば拓海は私のほうに詰め寄って来ていて、壁に背中が当たった。
「…鮎沢はさ、もっと自分が女ってこと自覚したほうがいいよ。
、あと…やっぱ受けだね、岬クン」
「……死ね」
拓海に初めて名前で呼ばれた気がする。
いや以前にあったかもだけど覚えていない。
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「だからなんで…夏休みなのに登校してんだよ拓海…」
「岬クンと友好を深めようと思ってー」
私、美咲は生徒会活動で夏休みも登校しなくてはならない。
が、何故拓海がいるのか皆目見当つかない。
キィッ…
校門の前で車が一台止まった。
しかもリムジン。
…この車…は…
「これはこれは、早々にお会いできるとは。
星華高校生徒会長、鮎沢美咲さん、副会長鮎沢美咲さん。
…私は雅ヶ丘学園生徒会長、五十嵐 虎。以後御見知りおきを」
私って、本当に不幸だ。
続く