連載(碓氷寄り)

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「ん…」

目がさめると目の前に広がった見慣れない天井。
少なくとも私の家じゃない。

「目え覚めた??」

ひょいと私の視界いっぱいに現れたのは拓海。

「っ!?拓海!?」

私は起きあがろうと肘をついたけど拓海が私の肩を片手で持ったから起きあがれなかった。

「…私、帰る」

「わーお。熱が39度もあるのにタフだね。副会長??泊まっていきなよ」

「な、んで拓海の家で寝ない、といけない…っけほ…んだよ…」

「大丈夫。俺は病人は襲わない主義だから」

拓海はにこ…いやにやっと笑ってソファの隣にあるテーブルを引き寄せてその上におかゆらしき物をことんと置いた。

「…でも…迷惑になる」

「別に??会長があのあと3バカに会って殴りとばしてー。会長が副会長を家に運ぼうとしたけど家知らなくてー。で、俺ん家になった。
まあ俺が勝手に決めたけど」

にこりと笑う拓海。
ああもうこうなったら追い出してもらうしかないな。
散々申しつけてやる。

「じゃあ泊まらせてもらおうかな。
さっさとそのおかゆ食べさせてよ??
あ、私猫舌だし動きたくないんだよね。
それからタオル早く変えてよ。喉乾いたし」

どうだ!!
と私は心の中で笑う。
こんなわがまま追い出したくなるであろう!!
ちなみに私は猫舌じゃない

「ぷっ……追い出されようとしてるの見え見えだよ??副会長」

「っ〜!!」

拓海のハラの立つ顔がやけに目に焼き付いた。
拓海はおかゆをレンゲですくって私の口の前に持ってきた。

「は??」

「あーん」

「は??」

「だからあーん」

「自分で食う」

「なんなら一週間俺ん家泊まる??笑」

「すんません。」

「ほらあーん」

なんだかすごい早口で話した気がする。
私は!!拓海に根負けしてゆっくり口を開いた。

拓海はスプーンを私の口に付け、おかゆを流し込んだ。

「…ん…。うま…。おかゆ嫌いな方なのにすげぇうまい…!!」


「良かった。」

「お前…料理できるんだな。かなり」

「そーかなー。まあ一人暮らしだからねー」

けたけたと笑う拓海を見てるとバカバカしくなって眠たくなってきた。

「食べ終わったら、寝る…私は床で寝るから拓海はソファで…」

「俺が床で寝るよ」

「…じゃあ出ていきます」

「ダメ」

結局私がまた根負けしてソファで寝ることに。
電気を消されたらすぐに眠たくなってきて、一人暮らしのこととか家具の少なさとか聞くのを忘れていた。

「おやすみ鮎沢」

なんか名前を呼ばれた気がするけど、気のせいだと思う。




翌日―

「ふにゃ……ぁあ…ー」

朝起きると熱は下がっていてすっきりする。
大きく背伸びをして隣をみた。
拓海がソファにもたれて寝ていた。
寝顔は可愛いのになあ…。

「そんなに見つめられたら興奮するんだけど」

「ええ!?」

拓海の目がばちっとひらいた。

「お、起きてたのか!!」

「うん。副会長がふにゃ…のとこから」

うーわ。聞かれてたよ…。
つーか今何時だ。
私はぱたぱたとスカートを探った、がスカートじゃない。

「え、今気づいたけど服が違う…」

「あ、それ俺のカッターシャツ。下は俺の夏のスクールズボン」

「いやそこはいい。誰が着替えさせた」

「…ぷふ。俺??」

「お、お前かぁっ!!」

私は恥ずかしくなってロクに着替えもせず制服と鞄を持って拓海の家を出た。
いったん家に帰ろう。
てか拓海ん家って…

私はエレベーターを降りてエントランスを出た。
周りがやけにきらきらと思ってたが…
くるりと振り返ると、超高層マンション。

「ここ…私ん家の近くじゃん。つかその隣のちっこいマンションが私ん家だし…」

「へーそれは初耳だ」

「!?」

いつの間にかとなりには拓海の姿が。

「なんでいるんだ!!」

「いやあ…携帯、忘れてたから^^」

「…サンキュ」


携帯を確認すると現時刻は朝の4時30分。
通りで暗いと思った…。
日昇ってないしね…。
家帰って…まず風呂だな…。
それから…

そう考えているうちに家に到着。
鍵を開けて中に入る。
そしてソファに座った。
そしてなぜか違和感を感じた。
なんかいつもよりソファの沈みか深いような…

「いやあ実に綺麗な家だー」

「…拓海??」

私は立ち上がり拓海の腕を掴むと家から追い出した。

「お礼はまた今度するから今日は帰れ。
ありがとな」

それを聞いたかわからないけど足音が遠ざかり聞こえなくなった。

「さあ…お礼っつっても…」

食べ物くらいしか…。
しかもお菓子は苦手だし料理はまあできる…。
ああそうだお弁当だ。
ベタだがそれがいい。

朝学校に行くと他の生徒会役員のみんなが雑誌の集計を終わらしてくれていた。

「あ、美咲さん大丈夫ですか!?」

「倒れたって聞いたんですけど…」

「ん。大丈夫だよ。ありがとう!!」

「(美咲さんなんて笑顔が可愛いんだ!!)」

役員の声が一致した。



私は拓海を探して屋上にやってきた。
手作りお弁当を持って。

「おーい拓海ー??いるー??」

「あ、副会長。あいつら誰にもいってないよ。」

拓海が屋上にあぐらをかいてたそがれていた。


「そっか…美咲もだいぶ覚悟してたみたいだけど…3バカになんかした??」

「別にー。俺の密かな楽しみだったからあんま言い触らさないでほしいなとは言ったけど」

ああ、言いそうだな。

「会長もなんか脅してたし…」

美咲もやりそうだな

「やっぱ楽しんでんだな…」

「だって心配だっつったら怒るでしょ??」

「まあな」

私は少しずつ拓海に近づいて隣に座った。

「あのさ、拓海ってなんか腹立つよなー。
だってお前ってずっと私の前走ってる。
美咲も今拓海と並んでて…ふたりして私に声をかけてくる。
それがイラついてたんだと思う。」

「へー。さすが俺」

「ふん。まあ見てなよ。すぐに拓海と美咲を追い越して今度は私が拓海と美咲の心配をしてやるよ」

「!!」

「あ、そうそう」

私は右手に持った紙袋を拓海に渡した。

「これ。お礼に弁当作った。
でもまだお礼したりない。だからなんかもう一つ考えといて。じゃあ」

私がくるりと後ろを向いた瞬間腕を引っ張られた。

「じゃあさ。一日だけ俺だけのメイドになって??」

「……はぁ!?なに言ってんだよ殺すぞ」

「お礼でしょー??」

「黙れ。変態。殴られたいのか??」

少しだけでもいい奴だと思った私がバカだった。

前言撤回だ!!!!!!




メイド・ラテ―


例の3バカが美咲のギャップと美咲の可愛さにハマってしまった。

そしてそんな状況を楽しみにくる奴拓海。


ね、美咲。ほかのバイト探さない??





第一話終わり。



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