隔離部屋
□まわる。
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良い予感は大概外れるくせに、嫌な予感はどうしてこうも的中するのだろうか。
どこかで出会った誰かは言った。そう思った瞬間から、気づかぬ間に自分でそちらを目指しているのだと。心の奥底で、本当はそれを望んでいるのだと。
間違ってはいないかもしれないと、その時はなんとなくだがそう思いもした。だが、今回のような場合では、その言葉を信じることなどできないのだ。
そう、オレはこんな事を望んじゃいない。目指してなんかいない。胸を張って、いくらでも言ってやるさ。オレはこんな事を望んでなんかいない!
「どうした?そんな納得のいかない様な顔をして…?」
納得できるわけがあるか。口を開くのでさえ嫌になる。ついでに目を開わせることも。
目の前で、気持ち悪い程良い笑顔をしているのはアホ魔王……もとい、サタン。
そしてオレは今、借りを返すためとはいえ、とてつもなく変な格好をさせられていた。
「おい、もういいだろう。早く着替えさせろ」
「何がそんなに不服なのだ?可愛いではないか!」
「……止めろ。その言葉が服に対してだとしても気持ち悪い」
「あぁ、カーバンクルちゃーん。これで一心同体に……」
「止・め・ろ!!」
全身黄色の着ぐるみ。それは、いつもアルルと一緒にいる黄色い生き物とよく似ていた。むしろそれだ。
理由は知らんが、カーバンクルをこよなく愛すコイツは、ぬいぐるみじゃ飽きたらず、ついに着ぐるみまで作ってしまったらしい。コレもぬいぐるみの方もそうだが、見れば見る程良くできているのが気に入らない。
サイズはサタン用に作られているため、オレには少し大きい。……そこがまた気に入らない。
兎にも角にも、オレはそれを着せられて、ジロジロと眺められているわけだ。
「いい加減にしろ。もう十分見ただろうが」
「ほう?助けてやった恩人に対してその言い草か?」
「ぐっ…!い、いいから……早くしろ」
「まぁ待て、そう急かすな。何かが減るわけではないだろう?」
「オレの精神がガリガリ削れていくわ!」
たとえ部屋にコイツしかいないと言っても、こんな格好で居るのには抵抗がある。ずっと誰かに見られているのも落ち着かない。
こんな奴に借りを作ったオレが悪いのは分かっている。分かってはいるが、恐らく他の選択肢は無かったんじゃないだろうか。
何せその時のオレは、話すことさえままならなかったから。