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□続! 王様の隣の席
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辛い練習にも勿論休憩はある。
一世代前と言えば休息も何もなしに炎天下の中走らされたり水分補給すらなかったり。
今は身体第一であり、それが最もだ。
そしてその休憩中、各々が身体を休めている刹那に、それは起こった。



「わぁああぁあああー!?」



日本語の表記に「わ」に濁点で付けられたらよかったのに。
そう思う位凄まじい、監督、チームの王様達海の叫び声が快晴の元に響き渡った。





続! 王様の隣の席






「なにっ?! な、!?」



飲んでいたスポーツドリンクを吐きだしかけた世良は声の主である達海が座っているであろうベンチに目をやるも、そこには居ない。
じゃああの叫び声は何処から?! 考える間も脳に与えず視線をあちらこちらへやるも、見当たらない。
隣で「今の叫び声監督ですよね?!」と世良と同様にテンパっている椿に何の言葉もかけてやれない。
そんな二人を見ながら赤崎は「またなんかちょっかい出されたのかなぁ」などと呑気に達海を探す。
自分がちょっかい出している事はこの際は置いておく。




「たーすーけーてぇえええー!」

「あっちか」

「え?! 今の救いを求める声?! 行くぞ、椿! 赤崎! って赤崎走り出すの早ッ!」




小さいクラブの小さい駐車場から聞こえたであろうそれに、若手三人組は走り出した。
自慢でも何でもないが、自分たちの監督というのは何故だか人気だ。
人気という括りだけならばまだ可愛い。変なものに人気で、しかもその人気は結構な好意の場合が多い。
この前もパッカ君に求愛されていたエピソードがあるのだが、余りにも笑えないので割愛。




「(監督ってどうして身の危険が多いんだろうか…!)」



既に何かにちょっかいを出されているという前提で椿は全速力で走る。
老若男女問わず好かれまくっている監督を助けるために。


そして駐車場に到着した瞬間の三人のリアクションは実にそれぞれだった。
世良は「えぇっ?!」と先ほど以上の混乱を示し、赤崎は「あー」と納得したような、寧ろ「しょうがないな」のイントネーションを含むのを一つ、そして、椿は。



「持田さんー!?」




想像もしていなかった人物の名を絶叫した。






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