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□あばんちゅーる
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石神の触り方はいやらしい。
いや、唐突にこんな事言ってなんだよと思うかもしれないが、本当にいやらしい。
止めてくれと叫ぶ間もなく押し倒されて、ああ、もう!





「いしがみ、!」

「ん? なんスか?」



ああ、その澄まし顔に一発拳でも入れてやろうか。
俺は半ば本気でそんな事を考えながら、石神の手から逃れようと動く。
部屋にノックも無しに入って来たと思ったらいきなり押し倒される。
しかも、床。
別にコイツにムードやらなんやらを勿論求めてはいないが、いきなりこれは無い。



「おい、お前…! いきなり、なに…っ」

「いや…なんか、ムラムラしたんで」

「はぁ?! お前ふざけ…っ」


蹴飛ばしてやろうかと体制を整えようとした瞬間、不意打ちと言わんばかりに石神が俺の首に口付を落とす。
ただキスするだけならまだしも、甘噛みしたり吸いついたりともう好き放題だ。
ジーノを我儘だからって王子と呼ぶなら、コイツだってなにか綽名をつけるべきじゃないのか?
俺は眉間にシワを寄せながら色々と石神から逃れようと動く。



「っ、いで…!」



びく、と思わず身体を縮ぢめる。
そりゃあ首元べろりと舐められて、吃驚してる所を思いっきり噛まれたら、そうなるよね、うん。
あああ、きっと歯形くっきりだよ。




「何すんだ、ばか!」

「何って…マーキング?」

「はぁぁあ?」

「もっとつけよ」

「わぁああ、やめ! ストップ! たんま!」

「えー」

「えー、じゃねえよ。痛いの! 歯形なんて付けられる程噛まれたら!」

「じゃあキスマークで我慢します」

「何言ってんのお前?!」




俺の必死の抵抗やら主張やらも虚しく、石神は何が楽しいか俺を弄りまくる。
くすぐったいやら恥ずかしいやら、やらしいやらでもう大変だよ。








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