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□Ich liebe dich
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「むらこしー」
「はい」
「むーらーこーしー」
「はい」
「…茂幸くーん」
「はい」
「〜っあーもう! 村越!」
我慢出来なくなった達海は、とうとう村越が持っていたものを奪いあげた。
*
「達海さん…返して下さい」
はぁ、と溜息を一つしてから村越は達海に向き直る。何時の間に機嫌を損ねてしまったのか、と考えるもまずは奪われた物を返してもらうのが最優先である。
達海は達海で、村越から奪った分厚い資料を片手に仁王立ちだ。
何が御立腹なんですか。問う気力はあったが、聞いたところでさらに不機嫌になりそうだ。
否。実際なるだろう。
「い、や、で、す!」
「達海さん…それ、読んどかないと…」
それ、と村越が指差したのはA5用紙数枚に書かれた明日の取材内容だ。
普段だったら数日前には広報から渡してもらえるのだが、あれやこれやと重なり、前日に資料を渡されるという事になってしまった。
「ていうか達海さん、何でそんな不機嫌なんスか?」
溜息を呑み込んでそう言うと、達海はむっと眉を寄せて唇を尖らせる。
あ、さらに不機嫌にしてしまった。
村越は瞬時に思ったが、思った所であれだ、後悔なんとか。
「このぉおおー! くらえっ!」
「え」
村越のマンションに達海が持ち込んだパッカ君のぬいぐるみを投げ付けられ、地味に「うっ」と唸った。
パッカ君ぬいぐるみは全長130p程度の大きさで、重みもそれなりにある達海お気に入りの枕となっているそれだ。痛い訳ではないが、痛くない訳ではない、よく分からない衝撃を喰らった。
ただ、重いとは思ったが。
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