□わんこの杞憂
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引き戸から現れたのは丹波、世良、そして不機嫌そうに立っている堺だ。
え。なにこのメンバー。
椿はまたしても首を傾げた。



「達海さん! いっ、いくら保健医の先生が不在だからって学校でそういう事は…! いやっ…ていうか監督椿狙いなんですか?! てか捕まりますからマジで!」

「丹波。落ち着け」

「堺が落ち着き過ぎなだけだろうが! なぁ! 世良!」

「そっ、そうですよ! 俺も堺さんと学校で、」

「世良ァ!!」

「あー? 何お前等? まさかお前等も怪我じゃねーだろうな?」

「え?」


お前、ら?



首を傾げている生徒達(堺を除く)に、達海こそ首を傾げながら言った。




「椿のやろー足痛めてる癖に朝練出てたから、叱ってんの」

「え」

「無理すんな、って事だよ」




あっ。成程。
そう思ったのは世良丹波だけではなく、勿論、椿も。
そう。確かに足を痛めた。
痛みは鈍く、我慢できない程でも、プレーに支障をきたすものでもなかった。
軽い腫れだ。ただそれだけ。
だから黙っていれば大丈夫だし、自分も練習がしたかったから、誰にも言わなかった。
誰にも言ってない。顔にも出してない。
それなのに、この人は、分かってしまったのか。
自分でも分かっていない、僅かな僅かな何かに、気付いてくれたというのか。
椿は茫然と達海を見た。
達海も、椿を見て一言。




「監督なめんなよ」





やっべ惚れそう。
不敵に笑った達海を見て呟いた丹波の言葉は、空気の代弁だった。





(ってか何でお前等いんの?)

(え。だって世良が)

(俺の責任スか丹さん!?)









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