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□続! 王様の隣の席
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「あー、ほら。達海さんが大声出すからバレちゃったじゃん。逢引き」

「よ、よくきた若人! 助けてくれ!」




コンクリートに押し倒されている達海を見て驚いたのか。それともそれを押し倒しているのがライバルチームのエースである持田にある事に驚いたのか、椿も世良も良く分からない。
とりあえず有り得ないシーンである事は確かである。



「なにやってんスか監督…」



はぁ、と溜息をついて赤崎は前髪をかきあげた。
まったくこの男は無防備過ぎる。だからこういう事が起こるんだ。はぁ。
溜息を吐いてから、彼を救うために持田に目をやる。


「ちがっ、俺は悪くないぞ! なんか車がきゅーに止まって誰かと思ったら持田でびっくりして」


普段からあまり大きな声を出さない、そして混乱しない男がこれほど動揺しているのは見ていて不思議な思いだ。
そしてその混乱を与えたのが持田だと思うと、不快だ。赤崎は持田を睨む。



「何他チームの監督押し倒してんスか。さっさと退いて下さいよ」

「うっわ〜怖いねェ、んとに」



あはは、と笑う持田に達海は珍しくタジタジだ。
唐突だった。
休憩時間だし、と思ってとりあえず自身の部屋に帰りホワイトボートでも取ってこようと駐車スペースに入ったら見知らぬ車。
おや、何処ぞのお偉いさんかと思ったらそのドアを開けたのは何とヴィクトリーの持田だった。
それだけでも驚きなのに「俺結構あんたの事気になってるんだよね」などの発言をした後に押し倒されて驚かない人間は居ると言うのだろうか。



「じゃ、今日はとりあえず布告しにきただけだから、帰んね、達海さん」

「う、わっ」



ちろりと唇を舐められ(!)達海は肩を縮めた。
一体この男は何が望みなのかが全く分からない理解出来ない! 達海は頭がこんがらがる思いだ。




「あー、滞在時間四分って所かな? 態々来てこれだけかー」



周りはライバルだらけだし、大変だなぁと持田は立ちながら楽しそうに笑う。
あぁそうだとも。周りは敵だらけ、味方なんて一人も居ないさ。
今日は用もあるし、じゃあね達海さん。手を振って持田は車に乗り込み、エンジンをふかして去っていった。



「いやぁ、ああいうのを嵐の如くって言うんだよね」



世良は背後から聞こえたのほほんとした声に、勢いよくふり返った。



「お、おうじ…?!」






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