□世界で一番綺麗な終り方
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「タッツミーは生きているじゃない」

「いや。ほら、よく言うじゃん? 前世がどうのこうの的な? うーん」

「意外だなぁ。タッツミーがそんなの信じてるだなんて」

「信じるっていうかさぁ…なんとなくなんだけど」





緩やかに、穏やかに、光りから遠ざけられる。


何時だったか、一番楽な死に方は溺死だと聞いたことがある。
水を吸う痛みを越えれば、あとはもう何も感じない。
虚ろに。そして緩やかに死が私を迎えに来てくれる、と。



(出来上がった死体は最悪だけど、ね)





も一度水槽を見る。無駄にデカイ、それ。
色鮮やかな魚達。
歪な水石。
ふわふわ、揺れる海藻。
ぱくぱく、魚達が口を開ける。何処を見ているの?




「タッツミー」

「んー?」



首を傾げている間に、ジーノが俺の手を持って、これ見よがしに甲に口付する。
音無しに、触れるだけの。
えっ、と。俺はジーノの行動にさらに首を傾げる。何がしたいの? お前?




「いいじゃない。海の中でも」

「え、」

「怖くないでしょう?」



ぎゅ、
ジーノが俺の手を握る。
温かい体温。
ジーノの瞳は優しい光りを灯して、俺を見る。






「二人なら、怖くないでしょう?」






海の、底でも。






首を傾げて、慈しむように笑うジーノを前に、
俺は恐怖という感情をぽとりと落としてしまった。










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ネタ元:某少女漫画
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