□世界で一番綺麗な終り方
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「ねぇ、タッツミー」

「ん?」

「怖いのかい?」



言われた言葉に、身体がびくついた。
あ、やばいと瞬時に思った。
が、視野が広いこの男が、そんなものを見逃すはずがなかった。



「あたり、だね」



否定できず。
否定した所で、無駄なのは分かっている。
そんないらない努力ならばしない方がましだろう。俺は溜息をついた。
少しね、笑う。



「何が怖いの? 魚? 暗闇?」

「うーん…」



ちらり、大きな水槽を見る。
光束がない。そんな空間。
きっとあの水の中から天を仰げば、光りが虚ろに輝いているのだろう。
落ちていく様に、沈んでいく。ぶくぶく。
手を伸ばしても救われはしないであろう、深い深い底。


こわいものは、ただひとつ。





「海の、中」




──海の中みたいで、怖くない? ここ。




そういうと、流石のジーノも珍しく頓狂な顔をした。
あぁ、そうだよねぇ、そんな顔するよね。俺は苦笑いをしながら肩を竦めた。
そんな俺を見ながら、ジーノは腕を組んで「確かに海の中みたいだね、」と返した。
そうだよね。海の中みたいだ。


果てしない、ついでに終わりが見え難い、そんな場所だ。
何故怖いのか何て分からない。
俺は海で溺れたこともないし水が怖いなんて事も、そんな事は何一つない。
それなのに、何故だろうか。
答えは分からないんだけどさぁ(自分のことなのに)。


ただ、なんとなく思う。
漠然と。
ふと、そう感じた。




「俺、海で死んだのかなぁ」









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