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□灰色エキセントリック
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*もしも有里ちゃんが煙草を吸っていたら(有→達)
コンビニで一箱購入。
こんな小さな箱にお金をかけるなんて、馬鹿ね。
そう思いながら店員さんに1000円札を渡す。お釣りの小銭を笑顔で受け取る。
くしゃり、胸のポケットにそれをつめて私はコンビニから出る。
かつん。
ヒールが鳴る。
何気なく空を見れば、嘘みたいに快晴だった。
*
「あのさー、吸っても良いけど選手の前では吸うなよ」
あら。見つかっちゃった。
私は声の震源を辿る。そこには予想通りの人物が立っていた。
何時も通りの格好に、何時も通りの服を着て。
イングランドから呼び戻した、私たちの救世主。
「ふくりゅーえん? だっけか? なんかよく分かんないけど身体に悪いからさ」
「分かってるわよ。そんなの」
まさか選手たちの前で、吸う訳ないじゃない。私は携帯灰皿に灰を落とす。
携帯灰皿は随分可愛らしい。
素敵な小物みたい。
「なぁー、煙草って美味いの? 俺吸った事無いから分からないんだよね」
そんな事を言う彼の片手には不思議な味の飲料水。
私、それ美味しくないと思うけど。不思議そうに首を傾げている達海さんに、私はそうねぇと返した。
「美味しいっていうか、癖みたいなものだから」
「癖ぇ?」
「吸ってないと駄目なの」
頓狂な顔した達海さんに微笑みを見せる。
依存症。多分、ニコチン的なにか。
吸わなくても生きていけるわ。煙を見ても禁断症状なんて起さない。
無ければ無いで一向に構わない。
そこまで依存していないから。
(けど)
「吸ってないの、駄目なのよ」
達海さんが心配そうにしている顔が嬉しいから、そういう事にしておくわ。
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精々思ってよ、私を。