□ノン・アンフェア
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「ひっ、!」



何、何!? 
唐突な何かに俺はびくりと肩を震わせてその要因を考えたが、混乱した脳はなかなか答えを出してはくれなかった。
ぐるぐると混乱を続けていたが、べちょりと音がして、あっ、とやっと気付く。
──耳、舐められてんの!?


「っ…もち…!?」

「んー?」



ひ、何これ。
耳を舐められて身体がぞわりと鳥肌を現す。
ぞろり、舐められて甘噛みされる。ちょ、なにこれ。
舐め方エロ過ぎるよ、持田君。
う、やばい。何がって聞かれたら、答えられないけど。




「もちだ…っ、こら、やめ…、」

「えー、達海せんせ、こんなのは敏感なんだね。ウケるー…」

「…っ、まじで、しゃれになんな、…!」



ぞわぞわ、鳥肌が止まらない。身体が縮こまる。
耳なんて舐められたの初めてで、困惑する。う、やばい。
駄目だ。
このまま事が進んでしまえば、俺は何か大切な物を失ってしまう。確実に!



「も ちだ、やめ…!」


悲願のレベルだ、これは。それくらい俺は色々と追い詰められていた。
年下の男、しかも交換学生とはいえ自分の生徒に耳舐められて腰抜かしたなんて、屈辱にも程がある!
うう、視界がぼやける。



「あー…もう、そーゆー顔卑怯だよ…」


はぁ? 何が卑怯なんだよ。俺が何したって言うんだ。
文句をと罵声を浴びせたいと思うのだが、息詰る。はぁはぁ、くそう、これしきの事で。
羞恥やら疲労やらなんやらで目を閉じていると、後ろから持田が囁く。あ、こいつ絶対笑ってるよ。あの意地悪な笑いが眼に浮かぶ。



「せんせ」



なんだよなんだよ。
もう頼むから放してくれよ。で、お前はさっさと平泉のおっさんの所に帰りやがれ!
膝が笑ってる。ああ、プリント達は未だ廊下に散らばったまま。それもこれも、コイツの所為。
首に持田の息がかかる。ねぇ教頭先生、俺、何もしでかしてないんだよ。本当だよ。
ふふ、持田が笑った。



「言ったよね? 俺、この学校の奴等みたく甘くない、って」





何の話だよ、と言おうと思ったら耳をまた噛まれて、また俺は情けない叫び声を上げた。








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