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□ノン・アンフェア
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「せーんせっ」
不意打ち全開、後ろから抱きしめられた俺は、ひょわあと情けない叫び声を上げてプリントを廊下へぶちまけた。
あっ、出席番号順だったのに。この馬鹿。
*
「ぶはははっ、何やってんの、達海せんせ」
「お前が驚かすからだろ! あーっ、もう放せ」
交換学生の持田は、何かと俺につっかかってくる。抱きつきとかのスキンシップはいつしか当たり前にさせられた。堪ったもんじゃない、こっちは。
お陰で教頭からはぐちぐち文句言われてるんだぞ。
くそ、あのズラめ。
「もー、あのね。持田」
「なーに」
首元に顔を埋められる。
こうしていると大型犬を扱ってるみたいだ。けれど扱い辛い。
まあ扱いやすい生徒なんて、俺、担当した事ないけどね。
ふう、と溜息吐きながら持田の手を外そうとするも、割りと強い力で抱きしめられてるみたいで、びくともしなかった。
「俺ね、この前教頭先生に怒られちゃったの」
「教頭? あぁ、あのちっちゃくて腹出てるズラの人? 校長せんせーのがカッコイイよね」
「だよねー。あの2人兄弟なのに…って違う違う」
上手い事(?)話を逸らされて、俺は首を振る。
何時もこうして話を別物にすり替えられてはどうでもいい会話を続けてしまう。
しかも、この体制のまま。
男同士が抱き合って、しかも後ろから抱きしめられている感じを見て驚かない奴はそうそう居ないだろう。
男子校だからこそ、なんか嫌だし。
ぐ、と弾き離そうと思って力をさらに込めるも、持田はまったく微動だにしない。
現役のスポーツマンを舐めちゃいけないね、俺は溜息を吐いた。
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