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□酒と王様と俺と
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あまり飲むなと俺は言った。
そして達海も「分かった」と言っていた。ああ、言っていたとも!




「ごとーう!」



そうやって、ベロベロに酔って絡むお前は、本当に心臓に悪いんだ。










達海の部屋にDVD何ぞを届けに行ったら、珍しく晩酌をしていた。
なんだ珍しいな、なんて言えば、後藤も飲んでく? とビール缶を渡された。
いや、いいよ。
そう軽く断ると、40手前の男を一人残すんだぁ、とじろりと睨まれた。
40手前って、俺もそうだが。
そんな事を言いながら、まぁ、たまにはいいかと晩酌を共にした事を、今更に後悔していた。



「(あー…忘れてたなぁ…)」


そうだ。
この男が酔えば、笑い上戸の絡み酒だ。
絡むと言っても、スキンシップが増すや増す。そりゃあもう何だそのテンションと言いたくなる位に。
そして今も俺の腰に両手を回しきゃあきゃと喜んでいる。
一体何がしたいんだ、というのは酔っ払いには愚問である。
何故って、俺ははそれを10年以上前に既に学んでいるのだ。



「なぁんだごとー、その顔は!」

「え?」

「そのしょぼくれた顔はぁー!」


もっと楽しもうぜー! んもー!
楽しそうにあははと笑いながら今度は俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。
掻き乱しているという表現の方が的確なような気もするが。
明日も練習だというのに、ここまで酔わせてしまったのは俺にも責任があるんだろうか。
ふうと息を吐いたら「溜息禁止ー!」と、鼻をつままれた。
普段の低テンションからは考えられないアクションだよ、まったく。



「たりなーい、もっと飲もうぜ! ごとうー!」


そう言いながら缶ビールを持った達海に、俺はぎょっとしてそれを取り上げる。



「あっ、なにすんだよ馬鹿ぁ!」

「これ以上飲むのは駄目だ。どうせ明日頭痛で起きられなくなるぞ」

「んな訳あるかばかー!」

「待てってこら達海…って、あ。電話」

「はぁー誰だよー」

「あ?! こ、こら、達海!」



着信有りの俺のケータイを横から奪い、デスプレイを覗く。
なぁんだ、松っちゃんじゃん。どうでもよくね? と達海は俺に言う。
ど、どうでもいい内容で電話なんてしてくるか! お前じゃあるまいし!
そう言いかけた刹那、達海が通話ボタンを押して、止める間もなく、言った。



「あ、もしもし松っちゃん?」



あのね、




「後藤は俺のなの、だから、気安く電話かけてこないで」






そう言って、ケータイを狭いベットに放り投げた。





えっ?







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