□準備室の王様と
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「お邪魔しまーす」



がらり、
そんな音をたてながら部屋に入って来た石神を、俺は思わず凝視した。










「おっ、やっぱ先生居たー」

「いや。だってここ準備室…」




準備室といっても社会準備室で、地球儀やらでかい世界地図やらが置いてある部屋だ。
英語は勿論準備つなんて無いので俺はこの社会準備室を休憩部屋代わりにしている。
だって保健室、具合悪い奴が来ると追いだされるんだもん。


ソファに座って缶ジュースを堪能している時に、こいつ、何?




「へー、結構綺麗なんだね。ここ」

「そりゃあね。俺、掃除したし」

「掃除?」

「だって寝るのに埃があったら嫌じゃん」

「確かに」


くく、と石神は笑った。
思うんだけど、コイツって結構謎っていうか不思議君っていうか天然だよね。
そんな事をいつだか部活内で言ったら「同意はするけどアンタが言うと説得力が無い」と赤崎に言われた。
どういう事だっつうの。



「でー…何しに来た訳? 今授業中でしょー」

「ん? そりゃあおサボりですよ。いいでしょ?」


からりと笑う石神を叱るべきかどうするべきか、俺は無駄に悩んだ。
俺が怒ると言っても説得力が無いだろうし、そもそも俺の言葉をコイツが部活以外でちゃんと聞くのだろうか。
教師としてはあるまじき悩みやもしれないが、悩むものはしょうがない。
まぁ俺も高校生の時は単位がどうにかなる程度までサボったりしてたし。




「ま。いっか」




言いながらポッキーの袋を破けば、「さっすがぁ」と石神は笑った。







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