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□世界で一番綺麗な終り方
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俺の前世は、海で溺れて死んだのだろうか。
*
「タッツミー、大丈夫?」
妙に通る声したジーノに上から声をかけられた。
顔を上げれば、少しだけ心配そうに俺を見ている生徒に、力なく笑う。
何が楽しいのか、この歳での修学旅行の引率ときたもんだ。
金のない都立の癖に外国へ旅行だなんて、まったくダルい。
で、来たのは日本でも有名な水族館。
地下にあって、光りが無いそこに水槽。
月明かりの様な淡く頼りないライトだけがその空間の全てだ。
珍しい魚たちが泳いで、その度に不思議な色した鱗が光る。きらきら。
ピンクの珊瑚も青い水草も、ゆらゆらと揺れる。揺れている。
光りのない水の中に居る様な感覚。
細胞を、魚に突かれているようだった。
「気分悪そうだね」
「…ま、少し。ね」
ふうと息を吐いて、ジーノを見る。
ポーカーフェイスは別に得意って訳ではないけれど、さ。
酔った理由は馬鹿馬鹿しくて、話す気にもなれなかった。
「っていうかお前、修学旅行とか来るんだな。サボるタイプだと思った」
「……ふふ、そうだね。でも、たまにはクラスメイトと何かする事について享受しなければ」
あぁ、成程。
そういえば球技祭も文化祭もたいしてなんの仕事もしないらしいからね、お前。
それにしてもジーノの私服なんぞ初めて見たが、お前高校生かと言いたくなる位大人らしく、高級感をさり気なく漂わせている割には落ち着いている、そんな服だった。
センスあるね、言うと調子に乗りそうだから言わないけどさ。
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